周_01


玄関の壁にある電灯のスイッチを押す。
唐突に姿を現したのは、相変わらずごちゃごちゃとした部屋だった。椅子とテーブルだけが、ガラクタ――専門書や標本や論文のコピーといった、私には使いようのないものたち――の海に浮かんだ孤島のようだ。
部屋の主といえば、孤島の先にある、カーテンの閉まった窓を背に、こちらを向いている。青年の視界を拓く眼鏡には縁がなかった。
私よりもふたつ年下であるという隣人の、ぼさぼさというよりはくるくるした色素の薄い短髪は、綿菓子みたいに頭に載っかっている。つくりの大きなヘイゼルの目は、愛嬌と幼さを振りまいていた。

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