君のせい


僕の受験勉強を邪魔にしないようにとデートの回数が減ってきた最近。
外は少し肌寒く、紅葉も色づいてきている。
今日は勉強を教えてほしい、という理由を付けて部屋に呼んだ。正直それは建前だったけれど、意外と教え上手な先輩のおかげで黙々と勉強を進めてしまった。……久しぶりに会えたっていうのに。

「わ、」

ふと横を見れば、かなり近くにあった先輩の顔に間の抜けた声が漏れる。その距離を認識した途端、顔に熱が集まるのがわかった。
視線が絡み合ったあと一瞬ぽかんとした顔をしてから、くすりと笑った先輩に僕はどこか悔しさを覚える。
どうして君はいつもそう、余裕なの。
1つしか歳は変わらないはずなのに、その1年が僕にとってはとても大きく感じてならない。追いつきたくても追いつけない差に、焦ったってしょうがないと頭では分かっていても心をコントロールするのが困難だ。

「一紀くん?」
「な、なに!?」

突然、額を指でつつかれて軽く後ずさる。
そんな僕の様子にまた一つ微笑みながら「眉間に皺寄ってるよ」と自分の眉間をトントン、と指して言う。気付かないうちに顔に力が入ってしまっていたらしい。
「問題、難しかった?」となんとも見当違いなことを宣う先輩が少し癪に触り、緩んだはずの顔の筋肉がまた強ばる。これは意図的なもの。
ムキになる自分に嫌気が差しつつも、何も分かってないこの先輩に教えてやらなければならない。
ぐい、と先輩の肩をこちらに寄せれば、バランスを崩して僕の胸に飛び込んでくる。突然のことに目をぱちくりとさせてこちらを見つめてくる先輩の顔は、さっきよりもさらにもう一段近くて怯みそうになったけれど、どうにか堪えて小さな耳に手を添わせた。じわじわと朱に染まっていく目の前の顔に勝ち誇ったような気分になる。
でもまぁ、自分の顔も同じように赤いだろうから、何も勝ち誇れるようなことはないのだけど。

「い、のりくん……?」
「君のせい」
「へ?」
「僕がこんな顔になるのも、こんな気持ちになるのも、全部全部、君のせいだから」

鈍くても頭のいい先輩なら、ここまで言えば分かるでしょう?
額を合わせて「分かった?」と問えば「ふぇ」とか「あう」とか、よく分からない言葉を発しながら視線を彷徨わせる。その様子に今度は僕がくすりと笑う番だった。
細い腰に腕を回し、そのままごろりと自分の背中から寝転がる。シャツの胸元をぎゅうと握りしめてきた君の額に、そっとキスを落としてみる。

少し休憩にしよう。勉強して疲れた頭には糖分が必要だ。

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