油断は厳禁


「み、実くん……?」
「ん?」
「あの……この体勢は一体……」
「ダメ?」

飲み物を取りに行ってくれた実くんが戻ってきたと思えばしれっと私を抱え込むように座って、私は今実くんの脚の間にいる。お腹に回った腕が余計に恥ずかしい。実くんと触れている全ての部分が熱くて、きっと顔も真っ赤だ。
実くんのお家にお邪魔するのは、恋人という関係になってからは今日で3回目。もうだいぶ慣れて緊張も取れたはずだったのに密着度の高さに心臓がバクバクしている。今までだって一応、男の子のお部屋に行くわけだし少しはそういった覚悟もしていたけど、今日までの2回はなにもなかったからと油断していた。

「恥ずかしい?」
「……っん」
「あらら……」

耳元で囁かれた心地よい低い声に、身体が跳ねた。それを感じ取った実くんがさらに耳に口を寄せて「耳、弱いの?」と囁く。その声にまたゾワゾワとして、実くんの腕をぎゅうと掴んだ。

「ひゃっ?!ぁ……っ」
「あー……ヤバ。ほんとカワイーねあんた」
「や、っぅ」

はむ、と唇で耳を柔らかく喰まれて自分でも聞いたコトのないような声が口から漏れる。咄嗟に俯いて片手で口を塞いだ。腕を掴んでいた手が緩んだところで、実くんの長い指が絡まってくる。実くんの指も、すごく熱い。
ちゅ、ちゅ、と可愛らしいリップ音を立てながら耳に首元にとキスを落とされる。恥ずかしくて、少し気持ち良くて、絡まった指に力が篭る。

「首まで真っ赤だ」
「っふぁ……!?」

先程までと違った感触が首を這い、一際大きな声が出た。生温かくて濡れた感触が舌だと気づいた頃には、舌は耳に移動していて、水音が耳を支配していく。

「んっ、やぁ……」
「イヤ?」
「っ……」
「こっち向いて」

その言葉に首を横にふるふると振れば、耳元で微かに笑われる。ちゅくちゅくと聞こえてくる水音に、舌が這う感触。初めてのコトにだんだんと力が抜けてきた。そっと頬に手が添えられて顔の向きを変えさせられる。
向かい合った顔と顔。実くんの顔も少し火照っていて、メガネの奥から覗く瞳は見えづらいけれどどこかいつもと違って見えた。
数秒だけ見つめ合って目を閉じれば、何度も角度を変えて唇を啄まれる。

「口、開けれる?」
「んぅ、っは」
「ん、イイコ」
「ふ、ぁ」

ぬるりと口の中に入ってきた舌が咥内をゆっくりと舐め回す。恐る恐る自身の舌を動かしてみれば、一瞬驚いたようだったけれどそのまま絡め取られる。舌同士が合わさる行為、これもまた初めての感触で腰のあたりがゾワゾワした。刺激を追加するように頬にある手が耳を優しく撫でていく。
息が苦しくなってきて繋がれた手を2回握れば、意図を汲んでくれた実くんの唇が離れた。2人の間をつぅ、と銀糸が繋ぎ、それを見てまた顔が熱くなるのがわかった。恥ずかしさを隠すように実くんの胸に頭を押し付けた。

「っはぁ……」
「大丈夫?」
「うん……」
「よい、しょ」
「っわ?!」

息を整えていれば、突然脇に実くんの手が差し込まれてぐいっと強制的に体勢が変えられる。すとん、と落とされたのは膝の上。跨るような形の所為でミニスカートの裾が少し上がった。
どうしたら良いのか分からず、実くんの顔を見上げると、ぱちりと目が合う。ハァ、と眉を下げてため息を一つついて、顔を隠すように私の肩口へと埋めた。

「あー……のさ、」
「うん?」
「次、うち来るときはちゃーんと心の準備してきてくださいね?」
「……え?」
「……今日、油断してたろ」

このまま先へと進むものだと思っていた私は少し拍子抜けしたけれど、油断を見抜かれていたことにギクリとする。……ていうか、これは油断してたこともだけど、今まで気を張っていたのも気付かれてたってこと?それはちょっと恥ずかしいな。

「そんなカッコしてきちゃってさ……次はもう、我慢できないから」
「……分かりました」
「ほんと、頼みましたよ」

そう言ってじとりと軽く潤んだ瞳で見上げてきた実くんが、なんだかとっても可愛く見えておでこにキスを落とせば「ちょっと!」と眉を吊り上げて怒られてしまった。
……うーん、赤くなった顔で怒ると更に可愛く見えちゃうなぁ、なんて思ってしまったのは内緒。

BACK
×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -