油断もなにも


「……美奈子?」

少し下にあるピンクの頭目掛けて声を落とすも返事は返って来ず、代わりにすうすうと規則正しい寝息が聞こえてきた。
寝ちゃったか。疲れたよな。
お腹辺りに掛けていたタオルケットを美奈子の肩まで引き上げてやり、おやすみと小さく囁いて頭を撫でてから起き上がる。俺も少しの疲労感はあるものの、高揚し切った頭と身体では寝られそうになかった。そもそもまだ夕方だし。
ベッドの上や下に脱ぎ捨てた衣類たちを回収して、とりあえずパンツとTシャツだけ着直す。
美奈子も着せてやったほうがいいかな、でも起こしたら悪いしな……。寒くはないだろうしとりあえずいいか。
美奈子のTシャツとスカートに紛れ込んだ可愛らしい下着にドキリとしながらも、着ていた衣類は全て畳んでベッドのそばに置いておくことにする。下着のデザインはちゃっかり目に焼き付けた。
喉の渇きを潤してキッチンに立って、水を一口飲み込んだところでぶわりと頭が働きだす。

美奈子を、抱いた。

その事実に堪らなくなって「あー」だの「うー」だのなんとも情けない声を発しながらその場にしゃがみ込んだ。落ち着いていたはずの熱が身体中を巡る。顔あっつ。
あぁ、情けないといえば行為に及ぶまでの俺も情けなかった。美奈子から言わせてしまった。数時間前の俺を、顔にアザが残らない程度に殴りたい。

前回この部屋に来たとき、それまでとは違って気を抜いて見えた美奈子に少し攻めて、次回はこれ以上進みますよ、と警告しておいた。
いや、俺の部屋で緊張しすぎなくなったコトは良いコトだと思うし、嬉しいんですけれども?俺も健全なオトコノコなんでね?
あの日あそこで止めた俺、超エライと思う。ハイ、拍手。

冷蔵庫に凭れてもう一口水を含む。冷たい水が身体を巡る熱を少しだけ冷ましてくれて、心地良い。
あー……それにしても、可愛かったな。
なんて、冷ました熱をまた自ら集めに行くようなコトを考えてしまって「待て待て」と思考を飛ばすように頭を振ったけれど、そう簡単に飛んでくれるハズがなかった。

初めて触れた、大好きな美奈子のカラダ。
俺よりうんと小さくて、柔らかくて、白くて。

空いた片手を開いて、閉じた。
……やめろバカ、ヘンタイ。
閉じた手のひらをもう一度開いて顔を覆い、深く息を吐く。

感触も熱も全部、消えないでくれ。

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