雪の花びら占い


好き、嫌い、好き……。

目の前をふわふわと落ちていく雪のリズムに乗せて、そんなことを小さく歌う。花みたいに笑うあの子が、オレのことを好きか、嫌いか。
ボーッと歌っていた頬を、冷たい風がビュウと撫でて我に返ったときの口は『嫌い』の形で、微妙に凹んだ。
はぁー……何しとんのオレ。雪でこないなことしたってキリあらへんし、今オレが占うべきなんはあの子と一緒に帰れるかどうか!
チラリと校門の内側を覗けば、雪ではしゃぐはば学生たち。まだ降り始めたばかりの雪は、そんな生徒たちと一緒になって踊っていた。
さすがに寒なってきたし、あと5分待っても会えへんかったら今日は諦めたほうが良さそやなぁ……。
白い息を長く吐いてから空を仰ぐ。どんよりとした空は、まるであの子に会えなかったときのオレの心みたいだった。
会える、会えへん、会える……ってあかんあかん!
ついまた口ずさんでしまっていて、今度は『会える』のところで切ろうとしたとき、後ろから名前を呼ばれた。どんよりした色なんか弾いてしまうような、オレが好きな声。

「大地くん? こんな寒い中待っててくれたの!?」
「へへ、一緒に帰りとぉて!」
「いつから待ってたの〜!」

焦ったようにパタパタと駆けて近づいてくる美奈子ちゃんに、滑って転けんといてよとヒヤヒヤする。
たまにドジすることあるからなァ……。
寒かったでしょと心配そうに聞いてくる美奈子ちゃんだけど、会えたおかげでオレはもうぽっかぽか。

「何かあったかいものでも飲んで帰らない?」
「ええね! 行こか!」
「あ、その前にちょっと屈んで?」
「うん?」

進めようとした足を止めて、言われた通りに少しだけ屈めば、いつもより近くにある顔にドキリとした。それを隠すように「どないしたん?」と問えば、伸びてくる美奈子ちゃんの手。温かそうな手袋をしたその手は、オレの頭をぽんぽん、と撫でた。突然撫でられて、嬉しいけれど理由が分からずに小首を傾げていると「大地くんに雪、積もってたよ」と楽しそうに笑う。まだ地面には積もるほどの雪ではなかったけれど、じっと立っていたオレの頭には積もっていたようだ。

「へへ、おおきに!」
「でも歩いてたらまた積もっちゃうのかな?」
「そしたらまた美奈子ちゃんが払ってくれるんやろ? オレが得してまうわ!」
「ふふ、なにそれ!」
「でも美奈子ちゃんの手袋が濡れてまうんは良くないなァ……」

手袋に付いてしまった雪を軽く払って、手を重ねた。
手袋越しで温度はよぅ分からんけど、美奈子ちゃんが冷たなるんやったらなんもええことないよ。
かんにんな、と謝れば「付いた雪は、また大地くんに払ってもらうからいいよ」と重ねた手をぎゅっと絡め、ふふっと花のように笑うのだ。
ほんま、この子には敵わんわァ……。

帰り道の雪のリズムには、全部『好き』を当てはめて心の中で歌った。オレの君へのその気持ちは、積もり積もっていく。

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