眠れない夜はあたためて


「あ、もうこんな時間!」
「うわ、ちょっと夜更かししすぎたな」

週末のお家デート。実くんが昔どハマりしていたというゲームを2人で夢中になってやっていたら、いつのまにか日付が変わってからだいぶ経っていた。
普段あまりやらないゲームでこんなに夢中になったの久しぶりかも……実くんとだからかな?
固まった身体を解すようにぐっと伸びをする。時刻を気にしてしまうと眠気も襲ってくるけど、この時間ってお腹も空いてしまう魔のお時間で。ひと口お水を飲めばお腹がきゅるきゅると動き出す。

「……お腹鳴った?」
「え! 聞こえた?!」
「バッチリ」

聞こえているとは思わなくて咄嗟にお腹を押さえたけれど、それを見て「遅い遅い」と笑われてしまう。恥ずかしさで一気に顔が熱くなるのが分かった。
でも、聞こえてしまったものはしょうがないと空腹を実くんに訴える。お泊まりの日、今みたいにどちらかが深夜にお腹が空いて少しだけ夜食をーー2人の間では悪いコトと呼んでるーーつまむことも何度かあったから、今日も何かつまみたいとの意を必死に目で訴えた……のだけれど。

「……気のせい気のせい。ハイ、オヤスミ〜」
「え!」

ぷい、と視線を逸らして布団に潜ってしまった。今日は一緒に悪いコトをしてくれないらしい。盛り上がった布団を眺めながらちぇー、と小さく文句を垂れたところで思い出す。
あ……そういえば来週、ちょっと露出の高い撮影があるって言ってたっけ。身体作りがちょっと大変、とも。それなら確かに悪いコトに付き合ってる場合じゃないや。
よし私も我慢しよう、と隣に潜り込んだと同時にまたお腹がきゅるきゅると主張し出してしまい、実くんが堪らず吹き出した。

「も〜、我慢しようって決めたとこなのに〜!」
「ハハッ、しょうがないな。ちょっとだけな?」

笑いながら起き上がって、キッチンの方へと向かう実くんの後ろを着いていく。
悪いコトのメニューは何だろう、とワクワクしながら側で実くんを見ていれば冷蔵庫から取り出したのは牛乳で、それを見て乾かしてあった私と実くんカップを差し出すと、微笑んでから私のカップだけを引き取りつつ反対の手で頭を撫でられた。そのままカップの半分くらいまで牛乳を注いで、レンジにかける。
レンジを待っている間、後ろから腰に抱きついてみれば腕を掴まれて私ごとゆらゆらと揺れ出した。

「ふふ、ありがとう」
「あんなにキュルキュル鳴らされちゃ、さすがに放っとくワケにはいきませんからねぇ」
「わざとじゃないもん〜!」

揶揄うように言ってくる実くんにムッとして、大きく揺らせばレンジが丁度出来上がったことを知らせてくる。腰に引っ付いたまま実くんの手元を覗くと、湯気の立つカップに蜂蜜をトロリと垂らしてスプーンで一混ぜ。優しくて甘い香りが空腹を刺激した。

「ドーゾ」
「いただきます」

お行儀は悪いけれど立ったままで、ふーふーと少し冷ましてから口に含めば甘いミルクがじんわりと胃を温めていく。

「おいしー……」
「お腹、落ち着きそうか?」
「うん。ひと口飲む?」
「んー……じゃあひと口だけ」

もう一度ふー、と息を吹きかけてから実くんにカップを渡す。程よい温度だったようで、ひと口飲み込んでから、ほっと息をついた。
残りは私がいただいて、カップを軽く洗ってからさっきと同じ場所に置いて乾かす。

「満足しました?」
「大満足です!」
「じゃ、寝ますかね」
「お付き合いありがとうございました」
「どういたしまして」

お互いにペコリと頭を下げて、笑い合う。
今度は私が先にベッドに潜り込んで両手を広げて実くんを待ってみると、眼鏡を外してからふっと笑ったかと思えば布団の中でぎゅうと捕まえられた。そこまでは良かったのだけれど、絡められた足先が冷たくて冷たくて。
でも「あんたのせいで冷えちゃった」なんて言われてしまえば何も言えないし逃げる気も失せる。
ホットミルクで温まった体温を分けてあげるみたいに、実くんに引っ付いて眠りにつこう。


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