ふつつかなぼくたち


「角名のドアホーーーー!!!」

そういって教室を飛び出していったナマエ。そんなナマエの姿を見て、教室にいたクラスメイトたち(野次馬ともいう)が「やらかしたな」という目で見てくる。クッソ、わかってるよ。

ことの発端はなんだったか思い出せないくらい些細なことで。お互いちょっと虫の居処が悪かったのだと思う。ヒートアップした言い合いの末、疲れた俺は「めんどくさ」と零してしまった。めんどくさいはマズかった。

「角名はよ追いかけろや!」
「ミョウジちゃん絶対泣いてんで!」
「うるさいな、わかってるよ」
「痴話喧嘩して仲直り中です〜って先生には言うとくから!安心して仲直りしてこい!」

いや、なにも安心できねぇよ、と心の中で野次馬たちに悪態を吐きながら教室を出た。ちょうど予鈴が鳴ってしまう。次の授業をサボることがほぼ確定し、それによって部活で怒られることも確定して遠い目をする。

教室を出て、向かった先はよく一緒に昼休みを過ごしている場所。屋上へと繋がる階段の踊り場だ。ここの踊り場は他の階と違い、ちょっとしたスペースになっていてベンチがある。意外にも穴場で、ナマエのお気に入り。

「あ」

階段の下まで来れば、ベンチの上で蹲っているナマエの姿が見えた。…そこでそんな座り方したらパンツ見えてるんだけど。スカート短いんだし下になんか履いときなよね。今度それとなく注意しとこう。
近づいてくる足音に驚いたのか顔を上げて目が合う。ナマエの頬が窓からの光に反射して光った。ハァ、ほんとに泣いてるし。

「なんでここ分かったん」
「んー?ナマエのことはわかるよ」
「…じゃあ私がドアホ言うた理由もわかるやんな」
「…ハイ。」

隣に腰を下ろせば、こちらも見ずに痛いところを突いてきやがる。いや、うん、今のは俺が悪い。
ごめん、と言えば右肩に重さを感じてナマエの頭が寄りかかってくる。そのうえ頭をぐりぐりと左右に振って押し付けてくるもんだから、柔らかな髪の毛が頬に当たってくすぐったい。顔の下から小さな声で「私もごめん」と聞こえた。面と向かってごめんなさいができないのはお互い様みたいだが、これで仲直り。
ナマエの肩に腕を回して抱き寄せれば、ナマエも腕を腰に回してくる。

「サボってしもたなぁ」
「はぁ〜、ナマエのせいで北さんに怒られるんだけど」
「私も一緒に怒られたろか?」
「余計怒られそうだからヤメテ」
「ふふ」

腕を伸ばしてがんばれ、と頭を撫でてきたからその手を掴んで俺の頬に添える。手、あったかいな。
もぞもぞと起き上がってきたナマエが、両手で俺の頬を包んで額と額がくっつく。

「やっと顔見れた」
「近すぎてピント合ってへんのやけど」
「そう?」
「まぁええか、ちゅー」
「ん、」

ちゅー、と言いながら唇を食べられた。何度も何度も角度を変えて食べられる。頬を掴まれていたし、しばらくされるがままに受け入れていたが、段々ともどかしくなってきた。

「ナマエ、」
「っん…?」

キスの合間を縫って「おいで」と、自身の膝へと呼ぶ。膝の上にナマエを乗せて、今度は俺がナマエの頬を両手で包んでから唇を食べた。舌を侵入させれば、首に回っている腕に力が入った。絞められそう。
あー…このまま全部食べてしまいたい。
聞こえてくる音が水音と、たまに漏れる熱の籠った声だけの空間ではこれ以上は抑えが効かなくなりそうで、少し大きめにリップ音を立てて唇を離した。ナマエは力が抜け切ってしまったようで、こちらに頭を預けてくる。

「はぁ〜、このまま帰っちゃいたいなぁ」
「俺も」
「帰っちゃおか?」
「そんなことしたら明日から部活に顔出せねぇ」
「それはあかんな」
「あかんでしょ」

クツクツと2人で笑いながらのんびりと、残りの授業時間を過ごした。
しばらく喧嘩はしたくねえなぁ…喧嘩するたびに思ってんだけど。 

今日の喧嘩の理由は仲直りしてもまだ、思い出せなかった。







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