寧の緩急


帰宅したら名前がソファで暴れていた。
クッションに顔を押し付けてうーうー唸りながら、手足をジタバタと。あ、ソファぶん殴った。
ストレスを発散させるのが下手なナマエに限界がきたときに起こるコレ。こうなったら俺の手には負えないので気が済むまで暴れさせるに尽きる。暴れるといってもソファ上で完結するため、被害はない。
落ち着くまで別室で待機しておこうかな。

▽▲▽

15分ほどで唸り声もソファを叩く音もピタッと消えた。様子を見に行けばクッションを枕にして寝ている。

「あーあ、ぐしょぐしょ」

たくさん泣いて疲れたのだろう。クッションは濡れているし、閉じた瞼は腫れぼったい。鼻も真っ赤だ。それでも少しすっきりしたような表情ですやすやと寝息を立てているナマエに、ほっと息を吐く。ちゃんと発散できたようだ。
張り付いた前髪をよけたついでに、そっと額に口付けた。

「俺に吐き出してくれればいいのに。もっと頼れよ。」

以前もそう言ったことはあるが、どうにも「人相手だとうまく吐き出せない」らしい。…人相手って、お前も人だろ。
ソファの前に座ってナマエの寝顔を眺めていればうっすらと目が開いた。

「あれ、りんたろ…?」
「起きた?」
「おかえり」
「うん、ただいま」
「んん〜〜…わっ?!」

寝転がったまま腕を上げて伸びをするナマエの手首を掴んで半身起き上がらせ、そのまま自身の体を隣に滑り込ませる。ソファの上で横抱きする形に。「抱っこだ〜」と喜んでしがみついてくるナマエの頭を撫でてやれば、気持ちよさそうに目を細める。猫みたいだ。特別猫が好きというわけでもないが、こんな猫なら飼ってもいいかもしれない。

「いつのまに帰ってたの〜…ハッ、まさか見られた?」

撫でられながら恐る恐る、そう聞いてくるナマエに「ばっちり」と答えれば「あああ〜〜」と呻いて俺の胸に埋まっていく。見られたくなかったらしい。何度も見ているから今更何とも思わないんだけど。

「見られたのは仕方ない!ハグして!慰めて!」
「切り替えはやっ」
「い〜じゃん、暴れた後のりんたろタイム」
「はいはい」

見られて落ち込んでいたのはほんの一瞬で、ガバッと顔を上げてハグを御所望してくる。まだ泣き腫らした顔だけど、笑顔が戻ってきていた。泣いてるより笑ってる方が断然いい。ぎゅっと膝の上にいるナマエを抱き締めてやる。
こうやってちゃんと甘えられるんだから、俺に全部吐き出して、俺の胸で泣いてくれるようになればいいのに。
あぁ、でもそうしたらナマエの言う「りんたろタイム」はなくなるのかもしれない。それはちょっと寂しい。
今のうちにこの可愛く甘えて来てくれる時間を堪能しておこうと思う。




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