不意にキュンする大きさ


お昼ご飯を作っていれば、ピンポーンとインターホンが鳴る。すぐに出たい気持ちはあるのだけど、お野菜を炒め中なのでできれば今は手を離したくない。もうできるんだもん!
ということで、キッチンからできるだけ首を伸ばして「研磨ー!ごめん出てー!」と叫ぶ。返事は聞こえてこなかったけれど玄関が開く音と「こんにちはー!」と元気なお兄さんの声が聞こえてきたから、ちゃんと出てくれたらしい。この元気な声は宅配のお兄さんだ。
研磨がなにか頼んだのかな?なんて考えながら、炒まった野菜をお皿に取り分けていく。

「研磨ありがとー!ご飯もちょうどできたよ!」
「ナマエ宛だったよ」

ハイ、と手渡された小さめの箱。何か頼んでたっけ?と一瞬首を傾げたけれど、送り主の欄を見て思い出す。

「コントローラーだ!」
「あ、買ったんだ」
「うんー!可愛いやつにしたのー」

たまにする研磨とのゲームで、いつも研磨が使っているなんだかいかついコントローラーが羨ましくて、ここ数日買おうかどうか悩んでいたのだ。研磨みたいにガチでやるわけじゃないし……と機能よりデザイン重視で選んでみた。クチコミもまぁまぁ良かったしね。
今すぐ開けたいのはやまやまだけど、ご飯冷めちゃう!

「ねぇ研磨、今日忙しい?」
「別にそこまでじゃない。なんで?」
「ご飯食べたらコントローラーの設定手伝って欲しいな……って」
「っふ、いいよ」
「やった!」
「ならほら、早く食べようよ」
「うん!いただきます!」
「いただきます」

▽▲▽

「おー!かわいい!」

ご飯を終えて、片付けも後回しにしてさっさと箱を開けて白と赤の可愛いコントローラーを手に取る。私の手にもぴったりサイズ!

「研磨見て見て!」
「小さ……片手でひとつずつ?」
「違うし!ひとつで両手持ち!」

私の手には両手持ちでぴったりだったコントローラーは、研磨には手のひらサイズだ。
バカにしながらも、カチカチとあっという間に設定が終わっていく。器用ですこと。
研磨なら片手でひとつずつコントローラー持っても操作できちゃいそうだ。ていうかたまに2個持ちしてるよね。

「研磨が持つとすごく小さく見える……」
「小さいんだって」
「研磨そんなに手大きかったの!?ちょっと比べさせて!」

コントローラーを持った手首を掴んでそう言えば、「えー」なんて言いながらも手を開いて差し出してくれた。そこにぺたりと自分の手を重ねてみる。
私の指の先が、研磨の第三関節の下くらいだった。それに気づいた研磨がくいっと指の先を曲げてみて、「小さ」とくすりと笑う。
男の人だし、大きいとは思ってたけれどあんまりじっくりと比べたことはなかったからちょっと驚いた。
じぃっと大きさの違う重ねた手のひらを眺めていれば「終わり」と言って離されてしまう。

「え!まだ!もう一回!」
「えー……じゃあこっち」

面倒くさそうな顔をしながら差し出されたのはさっきと反対の左手。右手はゲーム機に伸びていた……まぁいいけど!
もう一度比べてみて、大きさの違いにちょっとキュンとしたりしちゃって。ちょっと手をずらして指を絡めて、ぎゅっと握ってみた。

「!」

ゲームに集中しながらも握り返してくれた。嬉しくなって、そのまま私も反対の手でスマホをいじってくつろぐ。
少しして、するりと絡めていた指を解かれたと思えば、カチカチカチッと先ほどよりも強く早くボタンを押す音が聞こえてきて、「……ボス戦なのかな」とチラリと画面を覗き見すれば、やはり強そうな敵と戦っている。ボス戦は大事だもんね、と離された手はそのままに私もネットサーフィンを再開する。このワンピ可愛いなぁ。

「え?」
「ん?」
「な、なんでもない!ふっふー!」
「変なの」

ボタンの音が落ち着いたと思えば、研磨との間に置いていた手が何も言っていないのにもう一度絡められて、握られた。
嬉しくてぎゅっと握り返せば、研磨からもぎゅっとされて、笑みを溢さずにはいられなかった。


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