月並みな日曜


トトト、とリズミカルに包丁を叩く音と、カチャカチャと卵を混ぜる音が響く日曜日の朝のキッチン。
土曜日から泊まって、日曜の朝は2人でご飯を作る。それがいつの間にか治とナマエの習慣になっていた。まぁ、朝といっても時計の短い針は11に近いのだけれど。

「なぁ。めし作るときに嫌いな作業てある?」

治はふと、左隣で卵焼きを作っているナマエに問うた。
今日の朝ご飯は焼き魚定食だ。朝食のメニューはいつも気分で決めているが「ちょっと手間暇かけた贅沢な朝食」というテーマである。具沢山のホットサンドや、前日から漬けておいた半熟の煮卵とネギ胡麻だれのTKG、高級食パンで作るフレンチトーストなどなど。バイトや課題で疲れ切っている日には「シンプルイズベスト朝食」というテーマにシフトチェンジして、トーストと目玉焼きになる。そんな簡単なメニューでも2人仲良くキッチンに立つ。

問われたナマエは手元から目を離すことなく、首だけを横に傾げて考える。嫌いな作業…。

料理は好きだ。お互いに料理を仕事にするために今の専門学校に通っているし。パッと思い付くものがない。切る、煮る、焼く、揚げる…どの作業も好きだった。いろいろな料理の工程を思い浮かべながらもナマエの手はテキパキと動いている。フライパンの上には綺麗な黄色の卵焼きが完成していた。卵焼きは、2人ともしょっぱい派。

「あ」

焼けた卵焼きを均等に切り分けているときに、ひらめいた。嫌いな作業あった。

「綺麗に畳まれたお肉を広げていく作業。」

パックの中にびっしりと並ぶ、うすっぺらいお肉を広げる作業は嫌いだった。どうしてその畳み方、並べ方をしたのだと問いただしたくなるほど広げにくいものだってある。脂と赤身の境目は破れやすいし。破れたらイライラしてきて、その後の広げる作業が雑になる。お肉にキレるのやめたい。

ナマエの答えを聞いた治は、手を止めてナマエを見ていた。口をぽかんと開けて、間抜けヅラだ。そんな治を見てナマエは何か変なことを言っただろうか、と不思議がりながらグリルを覗いて魚の焼き加減をチェックする。もうちょいかな。

「っふ、」
「ん?」
「あっはっは!そこかい!」

治がおかしな息の吐き方をしたと思えば盛大に笑い出した。急に笑い出すものだからナマエは目をパチクリさせて治を凝視してしまう。今のどこにそんなツボが?
ひとしきり笑い終えてヒィヒィと息を切らす治。笑いすぎて目には涙まで浮かんでいた。

「笑いすぎでしょ」
「まさかそんなとこやと思わんかってんもん」
「も〜ほら、鮭焼けたよ。ごま和えできてる?」
「おん、できとる!」

食器棚から小鉢を出して、後ろ手に治へと渡せば小鉢と引き換えに魚用の長皿が手に乗った。冷めないうちに美味しく食べたいので、お皿に盛る作業は手早く、黙々とこなす。テーブルの上にはお揃いのランチョンマットとカップ、お箸がすでに用意されている。

【今日の献立】
・鮭の塩焼き
・だし巻き卵
・ほうれん草のごま和え
・油揚げと玉ねぎ、しめじのお味噌汁
・白米

彩りも良く、美味しそうな香りが漂って視覚と嗅覚から空腹が刺激される。空腹は最高のスパイス。
向かい合って席につく。
目を合わせて、手を合わせてから

「「いただきます」」




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