※似てません


「あっつ……」

Tシャツの襟口を掴んで、パタパタと空気を入れ込めば多少の涼しさを感じる。本当に多少。西日が当たるこの部屋は、夕方になるとじりじりとした暑さが嫌になる。西日が当たること以外は良い部屋なんだけど。

「ただいま〜って暑!」
「あ、おかえり」
「なんでクーラー付けてないの?!」
「あー、ね」
「ね、じゃないのよ」

エアコンのリモコンを手に取り、電源を点ければゴオーっと音を立てて冷風が吐き出される。ナマエはエアコンの下に立って、襟口をパタパタとさせながら冷風を服の中に入れ込んでいた。ずる。
首筋を流れていた汗がシャツに吸収されていくのが見えて、拭いてやろうかとも思ったけれどどうせこのあと着替えるだろうし。……ほら、冷風に満足したのか着替えに行った。

「倫太郎〜チューペット食べる?」
「食べる」
「なんでもいい?」
「ん」
「はーい」
「うっわ冷た!」

背後から突然首筋にキンキンに冷えたチューペットが当てられて、暑さでぼーっとしていた頭も覚めた気がした。ビビるからやめてほしい、今度仕返ししてやろ。
チューペットを受け取って、真ん中で折って2つとも咥える。甘い、冷てぇ、生き返る。
子供の頃はチューペットは2人で分けて食べなさい、だったけど大人になった今は独り占めだ。ナマエとはたまに分けるけど、半分欲しいときは折って寄越してくるから今日は俺が1本食べていいんだろう。
俺にチューペットを渡して一度冷蔵庫に戻って何かを取ってきたらしいナマエが隣に座ったと思えば、バリンっと小気味良い音が聞こえてきた。

「え、なに食ってんの」
「え?きゅうり」

横を見ればきゅうり1本を丸齧りしていたナマエ。バリバリと良い音を立てながら食べ進めている。……せめてスティックに切るなりしなよ。

「……俺カッパと暮らした覚えないんだけど」
「誰がカッパよ」
「それなんも味付いてないの?」
「うん、そのまま」
「へぇ……」
「ぱっと見チューペットと同じじゃん」
「は?」
「ふふふ」

チューペットときゅうりはちげぇだろ。


BACK
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -