これからも隣で


「こんばんは〜!」
「あら、ナマエちゃんいらっしゃい」
「お邪魔します〜」
「まだ信ちゃん帰っとらんのやけど……」
「知っとる!先帰っとれって言われたんよ」

ガラガラ、と引き戸を開ければいつものようにニコニコ笑顔のおばあちゃんが出迎えてくれた。辺りを漂ういい匂いに思わずスンっと鼻を鳴らした。この匂いはきっとおばあちゃん特製の豆腐ハンバーグだ。信介の好物やもんね。

今日は幼馴染で恋人でもある信介の誕生日。
肝心の今日の主役がまだ部活が終わらず帰って来ていないが、その間に準備をしてやろうと思う。
まぁ、準備といっても料理並べたりするだけだけど。
おばあちゃんと一緒にキッチンへ向かい、持っていた箱を冷蔵庫へと突っ込む。もう何年も通っているから、勝手知ったるなんとやら。

「あ、やっぱ豆腐ハンバーグや〜!」
「信ちゃんこれ好きやからねぇ」
「私もおばあちゃんの豆腐ハンバーグ好きやよ」
「ふふふ、ありがとうね」

鍋を覗けば、綺麗に整えられた豆腐ハンバーグが並んでいた。今日のはひじき入りで、より一層美味しそう。気を付けんとお腹鳴ってまうわ。

「ただいま」
「信ちゃんおかえりなさい、ナマエちゃん来とるよ」
「おん」

料理も全て出来上がったころ、主役の帰宅。おかえり、と玄関に顔を覗かせれば緩く笑ってただいま、と返ってくる。おかえりなんて言うこと少ないから、なんだかちょっとむず痒かった。

▽▲▽

相変わらず美味しいおばあちゃんの手料理をいただき、買ってきたケーキも食べた。ケーキと信介のツーショット、しばらく待ち受けにしようかなぁ、と零したら「ケーキとやなくてナマエとのツーショットにせえ」と肩を寄せてツーショットを撮らされた。「こんなん待ち受けにしたらバカップルみたいやん」なんて照れ隠しに言ってしまったけれど、本当はすごく嬉しくて。幼い頃の信介とのツーショットは沢山あるけど、最近のツーショットはあまり撮れてなかったから。信介の誕生日なのに、私がプレゼント貰っちゃったなぁ。

片付けはええからゆっくりしとき、というおばあちゃんのお言葉に甘えて食後は信介の部屋でのんびりさせてもらうことにした。(いつもは片付けも手伝うとるよ!)

「あ、せやったこれ、」
「なん?」
「プレゼント」
「今年もありがとうな」


鞄と一緒に置いておいた紙袋から、ラッピングされた袋を取り出して信介へと手渡した。私から信介へのプレゼントは中学からずっと同じ。部活で使えるようなスポーツタオル。ある意味願掛けみたいなものらしく、信介から毎年タオルをリクエストされるのだ。タオルをあげ始めて3年目くらいで違うものをあげたくなったけれと、プレゼントをあげるイベントは他にもあるし、信介が欲しいならそれでいっか、と思うようにしている。

「ナマエからタオル貰うんも最後やなぁ」
「え?そうなん?」
「おん。バレー頑張るためのナマエからのタオルやからな」
「……それは来年からなにあげるか迷うなぁ!」
「ふっ、楽しみにしとるわ」

プレゼントしたタオルを子どもみたいな笑顔で首に掛けて見せる信介に、私もつられて笑ってしまう。
最後のタオルなんやったらもっと悩んで悩んで買えばよかったかもしれん……。バレー頑張るための私のタオル、か。嬉しいことを言ってくれるなぁ。

「ありがと」
「……?」
「ふふ、なんでもあらへん!」
「うわ、こら危ないやろ」

何にお礼を言われたのかわかっておらず、きょとんとした顔の信介に思い切り抱きつけば、叱りながらも抱き止めてくれて、大きな手で優しくあやすように背中を撫でてくれる。

「来年もお祝いさせてな」
「気がはやいなぁ」 


来年はどんな信介になってるのかな。どんなプレゼントが似合うかな。

来年もその先も、ずっと隣でお祝いさせてね。
お誕生日おめでとう。



2021.7.5


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