ぐらりぐらりと視界が揺れる。身体中が発熱装置にでもなってしまったのではないかと思うほど身体が熱い。隣の白竜はどうしているかと気付かれぬよう視線を向ける。彼は至って平生と変わらず座っていた。負ける訳にはいかない、のだ。勝負をふっかけられたのだから、おれは、ここで、はくりゅうに負けるわけに、は。 ふと身体が浮上するような感覚を覚える。ぶわりと身体を突き抜けて浮上するそれに逆らうことなく、引っ張られるように目を開くとよく見知った人間の顔が飛び込んできた。 「あ、剣城おはよう」 「…松風?」 鈍く痛む頭をゆっくりと動かし、辺りを見回す。どうやら俺は自室のベッドに転がっているらしい。はて俺はいったいどうやって自室へ戻ったのだろうか。ぼんやりと形を成さない記憶を辿ろうにも、ぎしぎしと軋むように痛む頭ではなにも考えられない。小さく溜め息を吐き、だるい身体を無理やり起こす。が、固いベッドのスプリングがぎりぎりと音をたてるばかりでうまく力が入らないのだ。 「ああ、くそ…」 思い通りに動かない身体に苛立ちそう呟くと、俺を覗き込んでいた松風が心配そうに眉を潜めた。 「駄目だよ剣城、まだ寝てなきゃ」 「……俺は」 「剣城倒れたんだよ、白竜に対してムキになっちゃったんでしょ?お疲れ」 枕元に置いてある水盆に浸したタオルをぎゅっと搾りながら(先ほどまで俺の額に充てられていたものだ)、松風は「剣城も子どもみたいなとこあったんだね」と続けた。 「ちょっと、意外」 「……まあ、な」 ひやりと冷たい感覚が額に触れる。松風が先ほど搾っていたタオルだ。この様子からしておそらく俺をここまで運んだのも彼なのだろう。なんだか悪いことをしてしまったと思い小さく礼を述べると、松風は真っ赤になりながら微笑んだ。 「いいよ、だから今はゆっくり休んで」 「…ああ」 柔らかな松風の微笑みに言い知れぬ安堵を感じ、再びうつらうつらと夢の世界に足を踏み出す。今までにないような、穏やかな時間であった。松風の、その代わり、と続く言葉を聞くまでは。 「嫉妬したぶん、俺に付き合ってね、剣城」 さあおやすみ、と柔らかに頬を撫でる松風に確かな恐怖を覚えながら、しかし一度重みを増した瞼が都合よくあがることはなかった。 彼の恋人 ーーーーーーーーーー ななし様に捧げます!大変遅くなってしまい申し訳ありませんでした。 ドラマCDネタでシュウ白と天京と言うことでしたが、如何でしたでしょうか。書き直しなどいくらでも受け付けておりますのでなにかございましたらどうぞ! では、この度は企画参加有り難うございました! |