※ドラマCDねたより捏造




ぐらりぐらりと視界が揺れる。身体中が発熱装置にでもなってしまったのではないかと思うほど身体が熱い。隣の剣城はどうしているかと気付かれぬよう視線を向ける。彼は至って平生と変わらず座っていた。負ける訳にはいかない、のだ。おれは、ここで、つるぎに負けるわけに、は。






ふと身体が浮上するような感覚を覚える。ぶわりと身体を突き抜けて浮上するそれに逆らうことなく、引っ張られるように目を開くとよく見知った天井が飛び込んできた。どうやら俺は自室のベッドに転がっているらしい。はて俺はいったいどうやって自室へ戻ったのだろうか。ぼんやりと形を成さない記憶を辿ろうにも、ぎしぎしと軋むように痛む頭ではなにも考えられない。小さく溜め息を吐き、だるい身体を無理やり起こす。が、固いベッドのスプリングがぎりぎりと音をたてるばかりでうまく力が入らないのだ。

「いったいぜんたいなんなんだ!」

思い通りに動かない身体への苛立ちを隠しもせずそう叫べば、部屋の隅の辺りから聞き慣れた声が返ってきた。

「自業自得でしょ、ただの馬鹿だね」
「シュウ…?」

鈍く痛みの響く頭をゆるりともたげ、声の主を探す。窓際の一人掛けソファに、そいつはいた。

「自業自得、だと…?」
「そうだよ、馬鹿白竜。剣城なんかにムキになって倒れたんだ」

ほんと、馬鹿。
隠すことなく盛大に吐き出された溜め息が耳をチクチクと突く。申し訳ない気持ちと、それから勝敗が気になる気持ちも正直あるのだが、ここは素直に謝らないとあとにどれだけ面倒なことになるのかを白竜はようく知っている。ここは仕方がないと思い、チクチクと言葉を吐き続けるシュウに向かって頭を垂れた。

「…悪かった」

ぴたり、それまでやれ馬鹿だ阿呆だとチクチク言葉を吐いていたシュウの口が閉ざされる。同時に小さな溜め息が聞こえ、シュウの表情を窺うため恐る恐る顔をあげた。

「…今日はやけに素直じゃないか」
「……そりゃあ、なんだ、俺だって、悪かったと」

部屋の隅でシュウの動く気配を感じた。ひたりひたりと少しずつ近寄ってくるようだ。ああ、謝ったのに、面倒なことになってしまった。俺はいったいこれからどんな説教をされるのかと諦めて瞼を閉じようとした、とき。

「いいよ、許してあげる」

頬にふわりと柔らかなシュウの手のひらの温もりを感じた。

「シュウ…!」
「ただし」

ゆるゆると頬のあたりを漂っていたシュウの手のひらが、がっちりと添えられる。目の前に柔らかな微笑みを浮かべたシュウが、ゆっくりとその口角をさらに歪めた。

「嫉妬したぶん、僕を安心させておくれよ、白竜?」

ああ、ああ。俺はいったいこれほどまでシュウの説教を願ったことがあっただろうか。ぐっとのし掛かるシュウの重みに、諦めを悟り瞳を閉じた。

天馬と京介





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