まるで死んだように眠る君に、おはようと声を掛けるところから僕の一日は始まる。もともとあまり健康的でない肌色の君がそうやって寝ていると毎朝心配になるんだよ、もしこのまま君の真っ白な瞼が二度と開かなかったらどうしようって。まったく君は、普段のお堅い言動に反して朝だけはだらしないよね。おはようって声をかけてベッドのすぐ隣にある窓のカーテンを開いて、薄暗い部屋いっぱいに光を取り入れてもなかなか起きやしない。だから余計に心配になるんだっていい加減気づいて欲しいな。まあでも普段あんなにお堅い君の、寝惚けてぼうっとしてる姿なんて見れるのは世界中探しても僕ただ一人だけなんだし、結局は可愛いから許しちゃうんだけどさ。
しばらくの間揺すったり叩いたりして、ようやくうっすらと開いた白い瞼から覗く君の瞳と目が合ったら、もう一回きちんとおはようを告げて開いたばかりの瞼にキスをする。すると少しばかり目が覚めるのか、不機嫌そうに眉を顰める。ちょっと傷付くけど、それでもおはようと小さく返してくれるから、やっぱり僕は君のそういうところも含めて好きなんだ。ついこの間まで「五月蝿い」の一点張りだったけど、でも大丈夫、君のそういう行動はいわゆる照れ隠しだったんだってちゃんとわかってるからね。

「今日の朝食、ジャムってものを作ってみたんだ。君は食べたこともないんじゃないかな、ずいぶん昔の食べ物だしね。そのせいで紙媒介のレシピしかなくてさ、探すのも作るのも結構大変だったんだから」

それから君が目を覚ましたところで、次は僕が早起きして丹精こめて作った朝食を食べさせてあげる。美味しい?って聞くと必ず小さく頷いてくれて、ああ僕は本当に幸せなんだなあって感じるんだ。最初はすごく嫌がっていたのに(恥ずかしかったのかな)、最近はなにも言わなくても口を開けて僕の料理を待っていてくれたりするのも、本当に嬉しいよ。君の小さな口に合わせてパンを千切る喜びといったら!
ゆっくりと時間をかけて全部食べたら、次は着替えを手伝ってあげるんだ。べつにどこか出掛けるわけでもないんだけどね、ほら、好きな人にはやっぱり可愛い格好してて貰いたいじゃない。今日はどんな服がいいかなって相手に似合う服を考えられるのも、僕だけの特権だと思うと嬉しくて楽しくて。ちょっと前まで汚れてしまった服を脱がせてあげようとするとすっごく嫌がってたのも、今となっては夢みたいな話だね。

「じゃあ、僕はもう行かなくちゃ。昼食はなるべく一緒にしたいけど、遅くなったら先に食べちゃってていいからね」

本当はこうやって一日君の世話をして過ごせたらそれが一番なんだけれど。僕の見立てた服に身を包んだアルファに見送られて家を出る。いってらっしゃいのキスしてよって要求にはまだちょっと抵抗があるみたいだから、僕からいってきますのキスをして出掛けるんだ。僕の姿が見えなくなるまで玄関から見ててくれるアルファは本当に可愛くていい子だよ。少し前まで泣き叫んで帰らせろここから出せお前なんて大嫌いだなんて言ってたのに、最近では鎖もなにもいらないんだもの。僕もアルファを虐めたいわけじゃなかったのだから、つまり今の僕たちって最高の関係だよね。アルファは僕がいないと生きていけないし、僕はそんなアルファを愛してるんだから。ああもう僕って本当、幸せ者だよなあ。







「待って、それ、なんの話」
「え、なにって天馬、決まってるじゃない」

僕とアルファの恋人生活の話さ、素敵でしょう?
質問されたからそれに答えただけなのに、僕の答えを聞くなり天馬は真っ青な顔してさっさと向こうに行っちゃった。一体どうしちゃったんだろうね、へんなの。


可愛いあなた



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もずく様に捧げます!フェイアルで監禁ネタとのことでしたが如何でしょう…。監禁というより軟禁になってしまって申し訳ないです…書き直しなどいつでも受け付けておりますのでなにかありましたらご連絡くださいませ!
では最後になりましたが、この度は企画にご参加いただき有り難うございました。









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