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「もし、明日世界が終わるとしたら、君はどうする?」

平生と変わらぬ声だった。感情が籠っているようで、実際ひっくり返して掻き回して探してみても、その中にはなにもない。なにも。ただ平生と変わらぬ、それだけの声だった。

「そうだなあ」

間延びした声だった。世界の虚しさも現実の厳しさも胸の内の冷たさもなにも知らぬような、でもほんとは全部、知っているのに。それでもただただ無垢を装い続ける、間延びした声だった。

「べつに、いつもとなにも変わらないかなあ」

宙ぶらりんな言葉だった。会話をしているように見せ掛けてただ一方通行に投げられては投げる、疲れた大人たちのための言葉だった。

「それもそうかあ。君らしいや」

透明な言葉だった。意味も意義も存在もない、すり抜けて溶けてゆくために生まれた透明な言葉だった。

「ええ、俺ってそんなイメージなの、あはは」
「ふふ、うん、とっても君らしい」

渇いた笑いだった。無意味に吐息をこぼすだけで後にも先にもただ廃れ消えてしまうようにつくられた、脆く渇いた笑いだった。なんと自分たちの滑稽なことかと、涙に渇いた笑いだった。


∴それは彼の岸に置いてきた

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