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いつ死んだって悔いのないように
そう言っては、松風は俺の手を掬い、またそう言っては、松風は俺の額に口付けを落とした。


「それって中学生の言葉かよ」
「まあ、少しくらいこんなのがいたっていいじゃない」
「冗談」
「ひどいの」

でも、ほら、ねえ。やっぱり悔いのないように、さ。
そう言って彼はやはりそっと、まるで壊れ物を扱うかのようにそっと、俺の手を掬うのだ。その優しさが不慣れな俺にはひどく擽ったく、またどこかじわりと染むような感覚をもたらすのだった。

「死ぬとか、さ」
「ん?」
「例え話でも、そんなことあんまり言うなよ」
「…あ、はは、剣城ってさ、優しいよね」

ほら、また。俺の手をやわりと握りしめた、俺みたいなやつより、松風の方がずっとずっと優しくて脆いくせに。

「俺はどこにも行きはしねえよ、ばーか」
「…今日の剣城、なんか優しい」
「嫌かよ」
「まさか、どんな剣城だって大好きさ」
「そーかいそりゃあよかったな」

するり、いつだって俺の手をとるくせに、彼の手はいつだって俺を追うことはしない。夕暮れの十字路に、二つの影が少しずつ少しずつ距離をとってゆく。

「松風」
「なに」
「俺も、嫌いじゃねえから」
「え、」
「まあ、いつ死んだって悔いのないように、一応、な」

え、え、とおたおたと訳のわからない動きをする影を一人十字路に残して、俺はさっさと歩き出した。

「おっ、れも!俺も、剣城のこと、だいだいだいだーい好きだから!」

後ろから聞こえる叫び声に、それは有り得ないことなのだと知りながら、じゃあ今すぐ走って俺の手をとってみやがれと返したのだった。



そうして保険をかける君はいつだってひとつたりていないのだ




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天京の日記念に。なんか少し悲恋ちっくな気もしますがそこは気にしない。好きだ好きだと言いながらはっきりと引き留めることは出来ないへたれ天馬と無理矢理という理由で引き留められたい京介

( 0810 )









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