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※不謹慎死ねた




「生まれ変わったら、必ず君に逢いにゆくよ。約束だ。だから泣かないで白竜、僕のために涙を流してはいけないよ」




「うそつき」
それが彼の遺言でした。それがいったいどういう意味なのか誰に言ったものなのか、はたまた気の狂った彼の言葉です、意味なんてないのか。それは誰にもわかりませんでした。彼は俺たちを雷門の屋上に呼び出し、「あいつはうそつきだった。だから俺は文句を言いにいかねばならん。世話になったな」と言うなり壊れたフェンスの隙間から、たった俺たちの一言声を発する間もなく落下していったのでした。きっと声を発する間を与えれば、その温く優しい言葉に決心が揺るぐことを知っていたのでしょう。隣に立っていた京介はたいそうショックを受けていた様子でしたが、俺は不思議となんとも思いませんでした。だって彼はただ約束を破った、友人なのか恋人なのかは知りませんが、その人に文句を言いにいっただけなのです。きっと寝坊でもしているのでしょうその人に、文句を言いにいっただけなのです。なにもショックを受ける理由などありません。きっと彼らは今ごろ、俺たちの頭のうえのうえのそのまたうえの、ずっとずっとうえで仲良くしていることでしょうから。
「うそつき」そう言いながら落下してゆくその瞬間、彼の細く白い肢体の弾けるその瞬間、紅く染まる世界の中で彼は笑っていたのです。それはまるで天使のようにただひたすらに優しく優しく、どこまでも優しく、少しだけ哀しそうな、儚い微笑みでした。きっと彼は不幸せだったのでしょう。幸せな色をした、不幸せの中に生きていたのでしょう。彼はあの瞬間とても幸せそうに「うそつき」そう言っていました。その時彼は初めて幸せになれたのでしょう。そしてきっと、今もとても幸せなことでしょう。これは哀しむべきでなく、歓ぶべき悲劇なのですから。


∴約束と遺言と楽園の果て

( 0806 )









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