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静かな夜であった。それはそれは静かな夜であった。ギシリと己の体重に軋むスプリングも己の体温にぬるく染まったシーツも、すべてのものがそこに質量を残したまま死んでしまったように静かな夜であった。あとひとり足りない。世界のすべてが囁いた。足りない。スプリングは軋まないしシーツは温まらない。ひとり足りないからだ。カシムがいないからだ。


∴足りない夜

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