Love Call from the World | ナノ

 明らかに少し傾いている観覧車。持田と知世は二人並んで座っていた。流行りのアイドルが歌うラブソングだけが観覧車の中を満たしていた。
 ぼうっとしている持田に、知世は迷っていた。考えが読めないのはいつものことだし、二人でいることも少なくないはずなのに、知世は緊張していた。平泉の言葉や達海の言葉が脳内を駆け巡る。
 これでも、一生懸命悩んだし考えた。そうやって答えを出した。子供なりに、今自分にできる精一杯をやろうと思う。知世は、もう一度小さくなる遊園地を見下ろした。きらきらと宝石箱のようにハリボテのようなテーマパークは光り輝いている。そんなに大きくない遊園地の外にはもう普段の街のネオンが見えた。一瞬自分がどこにいるのだろうと不思議に思えるくらい、きらきらと輝いている。ふわふわと宙に浮いている。不安も期待も何もかも、まとめてひっくるめて大切にしてあげよう。知世はゆっくりと目蓋を閉じた。


「持田は大人よね」
「……そうだな」
 躊躇いのあと、持田は肯定した。
「わたしは子供だけど」
「…………」
「持田がすきよ。大人だとか、そういうのじゃなくて、持田が好きよ。色々考えたけど、やっぱり持田が好きよ。子供だから、それは違うとか言われたけど、わたしは持田が好きで、笑っててほしいし、優しくしてあげたいと思うし、幸せになって欲しいと思えるもの」
 心から。そう言って知世は俯いた。持田は相変わらず外を見つめている。また少し考えたあとに、視線を前に向けた。
「俺と知世ちゃんはさあ、結構年離れてんだよね」
「…うん」
「知世ちゃんはまだ子供で、これから先色んなこと経験していく。勉強や遊び、恋愛だってこの先していくと思う。俺みたいな大人と違って、経験することや経験しなきゃいけないことがたくさんある」
「…それでもやっぱり、持田が好きよ」
「俺なんかに未来あげちゃっていいわけ?」
 少し俯きがちに持田は問いかけた。ようやく顔をあげた知世は、ゆっくりと持田の前に立った。相変わらず舌を向いたままの持田の顔を覗き込む。迷子のような不安げな瞳は、どことなく優しく見えた。知世は持田の瞳を真っすぐ見据えた。
「わたしの未来、持田に捧げてもいいわ。どんなことになったって、わたしが悩んで考えたことだから、後悔しない。持田は、わたしが幸せにしてあげるの」
「…それ、俺が言うべき台詞だろ」
 ようやく顔をあげた持田はくしゃりと笑った。泣きそうな、迷子がようやく目的地に着けたような、子供のような笑顔だった。
 持田の頭を抱え込むように、知世は持田を抱きしめた。くっせ毛が、くすぐったい。くすくす笑っていると、持田も知世の背中に腕を回す。さっきまで子供っぽく感じていたのに、こうして抱きしめられるとやっぱり持田は大人だと、知世は思った。
 
「知世ちゃん、すげーいい女だよ」
「知らなかったの?待てる女は良い女なのよ」
「…ああ……ずっと、憧れてたよ」
 くすぐったさに身をよじって笑う知世の瞼に、持田は口づけを落とした。

「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -