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 レギュラスくんはわたしに冷たい。
 呼んでも無視するし、目が合うと舌打ちをする。ちょん、と触れ合っただけで物凄く身を引く。さすがにわたしも傷つきますよレギュラスくん。
「レギュラスくん、それわたしのカボチャパイだよ」
「それがどうしたっていうんですか」
「イエ、ナンデモナイヨ」
 レギュラスくんは横からわたしの皿を目掛けて手をのばす。レギュラスくんのごつごつした、男の子っぽい指が、カボチャパイを掴む。男の子なのに細くて綺麗な指。わたしの皿のパイは綺麗になくなった。
「何ですか」
 貴族のくせに、指をぺろりと舐めるレギュラスくん。行儀悪い。確かシリウス・ブラック先輩もやってた。やっぱり兄弟なんだなあと思いつつ、「えっちい感じがする」と素直に感想を述べたら、「気持ち悪い」と頭を叩かれた。でも、その綺麗な指も、真っ赤な舌も、本当に艶かしかったの。
 お腹減った、いい加減食べないと無くなるぞ、と気付いたわたしは適当にケーキをとった。
 ふとテーブルを見ると、フォークもスプーンもない。おかしい。
 きょろきょろしていると、レギュラスくんがくるんくるんフォークを回していた。やたらと多いフォークとスプーン。
「あの、レギュラスくん、フォークください」
 ぐう。
 わたしのお腹は限界である。わたしの目の前の質素なケーキも、レギュラスくんの前にあるチキンもサラダも今ならわたしのお腹の中にすっぽり収まる。
「フォークもスプーンもいらないでしょう」
 とうとうレギュラスくんの頭は逝ってしまったのか。ぽかんとしていると「間抜け顔」と頬を叩かれた。
 少しひりひりする頬を押さえてレギュラスくんを見ていると、チキンを一口サイズに切り出した。案外丁寧だな、やはり貴族。シリウス・ブラック先輩なんかチキンに噛り付いている。まるで犬。
「ほら」
 一口サイズのチキンがフォークに突き刺さってわたしの前に出された。
「お腹空いているんでしょう。食べなさい」
 何故。
 そんな、赤ちゃんでもないのに、「はい、あーん」とか、恥ずかしい。ずいずいとフォークを差し出すレギュラスくんが信じれなくて、暫くぽかんとしていると、鼻をぎゅっとつままれた。
「んぐっ!?」
 息出来ないよ、苦しい!わたしは酸素を吸い込もうと口を開けると、酸素と一緒にチキンも入り込んで来た。
 ここまで無理矢理食べさせられたのは恥ずかしいものの、ゆっくりと咀嚼する。熱くもなく、冷めているのでもなく、食べやすい温度のチキンはとても美味しかった。味わっているといつの間にか鼻をつまむ指も離れていて、レギュラスくんは次のチキンを突き刺していた。
「何するの」
「黙って食べてればいいですよ。美味しいでしょう、チキン」
 ごくんと飲み込むと、新しくチキンが差し出されたので大人しく食べさせてもらう。わたしは羞恥心よりも空腹に堪えれないからだ。
 レギュラスくんて、以外に優しい?と思いつつチキンを味わう。時々サラダも食べさせてくれて、何て言うか、お母さん?チキン美味しい。
「女性に物を食べさせるって、その人を支配するっていうか、征服した気分になりますね」
 そう言ってチキンを差し出すレギュラスくんは、とても素敵な笑顔をしていた。


これも愛情だと考える

title "氷上"

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