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 レギュラスは美人である。


 男の人に美人、と言うと語弊があるかもしれないが。色白、大人しい、華奢。まさに大和撫子。レギュラスは日本人じゃないから違うけど。すらりとした八頭身。つぶらな瞳に、柔らかそうな唇。天使がこの世界に降り立ったのなら、きっと彼のよううな容姿をしているに違いない。羨ましいくらい、むしろ妬ましいくらいである。

 彼の兄であるシリウスも顔がいい。しかし美人ではなく、かっこいいと思う。レギュラスと違って手はごつごつしてて、ああ男の人なのだと思わされる。レギュラスの手は無駄な脂肪がない、骨張った手だ。爪だって綺麗な色で、桜貝をはりつけたように可愛らしいのだ。タイプが違うにしろ、彼らブラック兄弟は美形兄弟なのだ。きっと下半身だっ「ちょっと、僕で下ネタやるのやめてくれます?」ちょっと、私の話を遮らないでようるさいわね。シリウスがあいつも俺の弟だし、きっと息子はやんちゃだぜ!じゃあ俺は朝までカテリーナと一緒だから!って言ってたの。それ思い出して。

 ははあ、きっと触れられたくない話題なのね。すでに過ちを犯したってところね。いいのよ、少年。性欲は誰にでもあるものだし。それに青春時代って過ちはもちろん、喜怒哀楽怨、懼れ、愛しみ、悪しみ、欲、驚き、色々な感情や行為を経て大人になっていくものだと私は思うし…勇ましい気持ち、活力あふれる気持ちのヴィーラは大切だと思うわ。為せば為る為さねば為らぬ、何事も。でも避妊は大切よ、レギュラス。わたしたちはまだ学生という身分なんだから。お家の事情も大変だと思うし…。それで、昨日は誰を食べたの?エミリー?アマンダ?それともミモザかしら。シルビア?そう言えばシルビアの胸はでかいわよね。この間自慢しに来たのよあの女!憎たらしい!「先輩も兄さんの毒牙にかかってしまったようですね。見損ないました」はあ?私あんな発情犬としてないわよ!失礼ね。人間だからいいじゃない、下ネタくらい。別に早漏だとか小さいとか馬鹿にするわけじゃないのよ。

「ずっと僕を見てるから、何かと思えば下ネタですか…」
 レギュラスは本を読む手を止めて、盛大に溜め息を吐いた。溜め息を吐く姿だってどこか色気を感じる。桜貝をはりつけた指で、艶のある髪を耳にかけた。ほら、艶やかじゃないか。私が同じ動作をしたところで艶めかしさはもとより、何も生まれない。むしろ萎えが放出される。
 もしもレギュラスが女の子だったら、と考える。
 きっと黒曜石のような色の長い髪の女の子だろう。どこまでも綺麗な髪の毛は、春風がふわりと揺らすのだ。モデル体型で、歩くと誰もが振り返るような美貌の持ち主になっただろう。声だって可愛らしいソプラノとか、凛としたアルト。胸だって大きいのだろう。やはり妬ましい。
「今日はどうしたんですか。おかしいですよ。また変なこと考えてるんでしょう」
「あたり。レギュラスの顔見てたらなんか考えてしまうの」
 レギュラスの美しい顔を見てるとレギュラスのことが知りたくなるの。そう告げるとレギュラスはまた溜め息。あ、ほら。睫毛だって、長くて綺麗。

「まあ僕は早漏ではないと思うし、人並みの大きさだと思います。けど、兄さんみたいに遊び人じゃありません。避妊が大切なことも知っています。シルビアは確かに大きい胸ですが僕はあまり好きではありません。僕は自分の手におさまるくらいか、それ以下が好きなんです。そうそう、先輩くらいのサイズがいいです。あそこまで大きくなって、かつ胸元をわざとらしく見せるのは頭が軽く尻も軽い女に見えますからね。兄さんは好き好んで尻尾振っていくんでしょうけど。そもそもだれも食べてません。僕はきちんと好きな人としたいです。軽々貞操をあけわたす女の人は駄目です。好きな人と結婚して好きな人との子供ができれば良いと思ってます。あと僕はやたらと世話を焼きたくなるような人がいいです。締め切りぎりぎりまでレポートを仕上げないで僕にすがってくるような。僕は優しいですから、助けてあげないこともないですよ。つまり、先輩みたいな人が好きです。と言いますか、先輩が好きです。ほら、僕のこと知れたでしょう?だから早くレポートを仕上げてください。時間がないのわかってますか?」

 なんか、レギュラスってピュア…そして貧乳好き?私のことも貧乳呼ばわりしたな。…なんだか聞いてはいけないものを聞いてしまった気分である。やはり兄弟、どこか似ている。兄は自覚ある誑しで弟は無自覚誑しかな。そんなことを知ってしまってはこの真っ白な羊皮紙に何も書けないじゃないか。だから、きっとレギュラスの手におさまってしまうくらいの胸で、貞操を守り続けている、手のかかる私という女性をレギュラスのお嫁さん候補に挙げてあげてもいいよ!

「じゃあまずはレポートを仕上げましょうか」
「うん!任せてよ!」
「できたらキスでもしてあげますよ」

 やっぱり兄弟だね。


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