午
前
三時の恋人
「レギュラスは綺麗な顔してるよね」
「ありがとうございます」
「そんなことないですよー、くらい言えよ。少しは謙遜しろよ」
「事実を認めたまでです」
今日のレギュラスは限りなくシリウスに近い性格をしている。傲慢知己。いつものレギュラスならわたしの言うことは無視か否定の二択しかしない。
しかしレギュラスについては非の打ち所がないから、余計に悔しい。顔は綺麗だし、頭は良いし、運動できるし、貴族だし。うーん、否定されてもムカつくかも。
「ところで先輩」
「なんざんしょ」
「それは何ですか」
「…スコーン」
だったもの。
今日は女の子らしくお菓子でも作ってあげようと、厨房にお邪魔して作ってきたのだ。まあ、レギュラスに褒めてもらいたかったと言いますか、ぎゃふんと言わせたかったと言いますか。
キーキー声でしもべ妖精に叫ばれながら作ってきたのだ。レシピを見ながら作ったはずなのに、何を間違えたのかいかにも中毒を引き起こしそうなスコーンもどきが出来たのだ。
「慣れないことするからですよ」
「ん、」
レギュラスはスコーンもどきを一瞥して溜め息をついた。まったくもってその通りでございます。何でも挑戦するのは良いけど、空回りするのがいけないんだよなあ。ちゃんと理解してからにしよう。
「レギュラスとアフタヌーンティーをしようと思って作ったんだけどなあ…失敗したんだ…しもべ妖精に泣かれたし……」
「それはそうですよ」
「紅茶はあるんだけど、お菓子がないのって寂しいからリーマスに分けてもらいました」
「危険な…!」
因みにリーマスにクッキー少しとチョコを少々を分けてもらう代わりに、今度ハニーデュークスの新作出たらおごる約束を結ばされました。
レギュラスは本日二度めの溜め息をつくと、テーブルの上のお菓子を見た。リーマスが分けてくれたのは本当に少しだったのだ。クッキー四枚、板チョコ半分。レギュラスは少し考えると「お湯でも沸かしといてください。今日は先輩のブレンドしたものが良いです」と言って出ていってしまった。
わたしはレギュラスの言う通り、紅茶の瓶を目の前にして考える。せめて頼まれたことくらいは達成しようと、ブレンドを始めた。
大分悩んでいたのか、時計を見るとかなりの時間がたっていた。アフタヌーンティーが終わるような時間になっていたのだ。
レギュラス遅いなあ考えながらとお湯を沸かし始めた。あつい!
「先輩、」
「レギュラス遅いよ!…ん?んんん!?」
レギュラスはいつの間にかローブを脱いでいた。ベスト姿で、珍しく腕まくりまでして。こうやって見るとシリウスそっくりだなあと思う。…じゃない!レギュラスはバスケットを持っていた。に、似合わない…。
「どうしたの、バスケットなんて」
「先輩、ぼさっとせずにお茶入れてください」
「ん、んん?」
レギュラスがバスケットを置いて椅子に座ってしまったので、わたしは慌てて紅茶を入れた。
紅茶をセットすると、レギュラスはバスケットから、あ!スコーンだ!
「ど、どどどうしたの?」
「作ってきました。先輩のレシピが置いてあったので」
「えええ!」
そのスコーンはわたしが目指したスコーンだった。本当にレギュラスは凄いなあ。料理まで出来るのか!
「美味しい!」
「先輩の紅茶も美味しいですよ」
「ほんと!?」
「先輩は料理出来ないけど、紅茶に関しては凄いですよ」
「!レギュラスに褒められると嬉しいなあ」
ふたりだとうまくいくんだね!
わたしとレギュラスは頭脳容姿運動果てはお茶会に置いても足して二で割ると調度いいらしいです!と言ったら容姿に関しては二倍じゃないですか、さらりと言われた。う、嬉しいけど…恥ずかしい。