触れたい





その手に、触れたくなった。理由は分からないけれど。掴みたくて手を伸ばすと、彼は、仕方ないなあというような顔をして、俺の手に、自分の手を重ねてくれた。



「大地さん」



彼の手は、節くれだっていて、男の人って感じがする。爪はとても短く切られている。多分バレーをする人はそうだと思うけど、大地さんのは深爪の勢いだ。彼の手を引っ張って、俺の口元に持ってくる。ちゅ、と口づけると、彼の指が器用にピクリと動いた。



「___、」



呆れたような、叱るような、そんな声音で窘められる。聞こえないフリをして、再び口づける。ちゅう。口づける、っていうより、吸いつく、だったかもしれない。大地さんの顔がほんのり赤くて、脳が甘く痺れる。欲望のままそろりと舌を出すと、触れる前に彼の手は、俺の手から逃げ出した。



「___、ダメだ」

「どうして?」

「汚いだろ」

「大地さんの手、綺麗で好きです。だから大丈夫」

「俺が大丈夫じゃない」

「恥ずかしいからですか?」

「!………う、…そういう、ことを…、聞くなよ…」



真っ赤な顔を、さっき俺が口づけていた右手で覆い隠している。手のひらおっきいなあ、素敵だ、とっても。そっと大地さんの肩を押して、ソファに押し倒す。不安そうに俺を見上げる大地さんに、頭がクラクラする。はあ、と自分が吐いた息がやけに熱っぽく感じた。

あ、耳、赤くてかわいい。



「ね、大地さん。大地さんの耳、可愛らしいですね」

「何いっ、ひあっ!」



ここからは、秘密。


 
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