(ネコ………) 丸まってるそれは、俺を見つめつつも動こうとしなかった。人に馴れてるのかな。触れるかな。茶、白、黒。きれいな三毛猫だ。 「ミケ、おいで。ちっちっちっ。ミケー」 「___?」 「ッ!!!」 振り返ると姉ちゃんがいた。俺と同じく部活に行く途中らしい。今日も姉ちゃんは美人だな、と思いつつ、熱い顔を俯いて隠す。 「…………見ました?」 コクリ、小さく頷く姉ちゃんに、更に顔が熱くなった気がした。ネコ相手に何話しかけてるんですかね俺。いつの間にか元凶の三毛猫はいなくなってるし。 「…黙っといたげる」 「ありがと……」 姉ちゃんの部活用のエナメルバックと学生鞄を、半ば奪うように受け取る。あー熱い。恥ずかしくて、俺は姉ちゃんを置いて、急ぎ足で部室に向かった。 薄く微笑んでいる姉ちゃんに気づかずに。 to list |