暖かいですね3年後 「春秋さん!」 ようやく耳に慣れてきたその低音に振り返る。少し遅い声変わりを終えたばかりのときは違和感しかなかったが、なかなか悪くない声だ。嬉しそうに駆け寄ってくるその姿は変わらなくて、つい顔が緩んでしまう。がばりと俺に抱き着くその身体も少しばかり大きくなって、それでもまだまだ倒れる程じゃない。 「うへへ、本部にきて一番最初に会えたのが春秋さんってなんだか幸せだな〜」 「はは、安い幸せだな」 すりすりと擦り寄ってくる___はその言動から実際の年齢より少し幼く見える。周りの歳の近いボーダー隊員が大人びた子が多いから余計に。 「安くないです!だっておれの幸せって春秋さんがいないとダメなんスから!」 ね!大変!と真面目な顔で言ってくる___にうっかりときめいてしまう。いい歳なんだから落ち着け、と自身を諌めても心臓ははやる鼓動を抑えられない。 「、俺がいないとダメなのか」 「あったりまえです!春秋さんもおれがいないとダメでしょ?」 口角を持ち上げる悪い笑い方は、どこか___と犬猿の仲の荒船に似ている気がする。何となく崩してやりたくなって、その口にキスをする。 「へ、」 「…そうだな、俺も___がいないとダメだ」 「っ!!」 春秋さんだいすきいいい!!と叫んだ___の声は、恐らく本部中に響き渡っただろう。きっと、最近___のことをよく見ている訓練生の少女達にもよく聞こえた筈だ。___は俺のだ。俺のものを勝手にジロジロと見られて不快にならない筈がない。その視線が、熱っぽいなら尚更。 「うわっ春秋さん悪い顔!かっこいいけどなんか荒船さんっぽくてやです」 むう、と唇を尖らす___にもう一度キスをしようと暗がりに連れ込む俺はダメな大人だが、当の被害者から俺を求めるのだから仕方がない、な。 to list |