WT遊真? しんじゃにはしゅくふくを




「本当に?」


つい、と目の前の青年が疑心に満ちた瞳を、ソファに座っている小さな白髪の少年に向ける。小南 桐絵の専売特許が「信じること」ならば、彼ーー小南 ___の専売特許は「疑うこと」だ。彼らは同じ血を分けた兄妹の筈だが、なぜこうも違うのか。足して割ってくれりゃあ良いのに、と林藤 匠は苦笑する。


「本当だ。俺はあいつの親父にも会ったことがある」

「近界民がたまたまその空閑 勇吾の情報を手に入れて息子を騙ってるだけじゃないの。あの自律型トリオン兵にも情報を共有させてさ」

「相変わらず切れ者だな、___は。確かにその可能性だってゼロじゃあない」


ピクリと青年の柳眉が動く。次いでぎゅう、と眉間に深いシワが刻まれる。整った顔が台無しだ。俺が___の言う可能性を肯定したのに渋い顔をしているのには、彼の本質に起因する。心の底では彼の妹と同じく、無条件に人を信じたいのだ。深い青の瞳が、自分の疑心を否定してくれないのかと縋るように揺れていて、林藤 匠は居心地が悪くなってしまう。やれやれ、困った奴だ。


「ーーーが、あいつのサイドエフェクトは確かに空閑 勇吾と同じものだ。目的に不自然さは無いし、迅のサイドエフェクトにも遊真が裏切る未来はない」

確定していない未来で、もしもあいつが俺たちを裏切ったならーーー、そのときは恐らく、俺たちがあいつを裏切ったときだ。


そう言い切ってやると、___はやっと強ばった肩から力を抜いた。ズカズカとソファまで近寄って、白髪の小さな頭をぱしりと叩く。


「いて。あれ?こなみセンパイのお兄さん。どうかしたの?」

「うるさいこっち見るな。ボスが言うから仕方なくボクはお前の面倒を見てやるけど、お前なんかこれっぽっちも信じてないから。ボスを裏切ったらこのボクがけちょんけちょんにしてやるから覚悟しときなよ」


そう宣う声はとても冷たくて、顔は林藤からは見えないけれどきっと険しいものだろう。普通ならば畏れて縮み上がるところだが、空閑 遊真は生憎「普通」ではない。


「___さん、つまんない嘘つくね」


にや、と赤い瞳が笑う。___は見るなって言っただろ!と怒って遊真の首を締めあげているが、遊真は呑気に口を3にしていた。

少年は裏切れないものがどんどん増えていくな、とひとりごちた。


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