甘い問い




迅と俺のアパートでごろごろしていると、適当に見ていた洋画がベッドシーンに入った。濃厚なディープキスと、白人女性の豊満な身体を無遠慮にまさぐる絵。洋画って1回はベッドシーン、しかも似たようなの入るよなあとぼんやり眺めていると、俺の手の上に熱いものーーー迅の手が重ねられた。


「迅?」

「___さんも、こういうことおれにしたい?」


挑戦的な、いたずらっ子みたいな笑みでそう聞いてくる迅。こういう笑みを浮かべているときは大体、というかほぼ確実に俺の反応を楽しんでいるときだ。つーか手が異様に熱いし、目も潤んでる。そんなに恥ずかしいならしなきゃ良いのに、そこまでして俺をからかいたいって、反撃されても文句言えねぇよな?


「…こういうことって?」


あくまで何でも無いふうに装って、映画をぼんやり見るフリをする。チラリと気づかれないように横目で迅を見ると頬を赤くさせながら小さく深呼吸した。お、何してくれるんだ?

重ねた手を迅の口元に持っていかれ、驚きを隠せずついテレビから迅に視線を移してしまう。自分を見たことが嬉しかったのか、迅は少し笑って愉しそうに俺の指を口に含んだ。


「んう、う……ふ、は…っ、ちゅっ、ん、ん……っ、んむ、」


まるで口淫を思わせるようなそれ。ぎこちなく、しかし奥までねっとり咥え込んでいる。……、エロいな。下腹部に熱が溜まっていくのを感じながら、迅の好きなようにさせる。ぢゅう、と最後に俺の指を吸ってからゆっくり離された迅の唇が、わざとらしく弧を描く。


「こういう…、えっちなこと」


どこぞのエロ親父のように俺の内腿をイヤらしく撫で回しながら、涙の膜の張った瞳で上目に見つめられる。


「…少し、したくなってきたかもな」

「あっ!、っ…、」


緊張からかまだ反応していない迅のものに布越しに手を這わす。ビクリと跳ねた腰に自分で恥ずかしくなったのか、迅は顔を赤く染めた。その顔を舐めるように見ながら迅のベルトを外しにかかると、迅も震える指を俺のベルトに掛けた。


「…じゃあ、もっと___さんがこういうことしたくなるようにしてあげるよ」


童貞処女のくせに、随分と生意気だな。
余裕ぶったその声はかすかに震えていたけど、知らん振りだ。


「ああ、期待してる」


恨むんなら、自分のその面倒臭い性格を恨むんだな。







「あっ、あっ、ッ〜〜!、…はあっ、んっ、…あ、あ、……っも、やだっ、___さ、っ、!、あう…っ」


ぐちゃぐちゃな後穴を掻き回す。もちろんコンドームをつけた指だけで、だ。もう女性器でもこんなにとろとろにならないだろうと言いたくなるくらい解せてしまった。
最初は大人しく、いつもやってる通り抜き合いをしていたのだが、迅が「こっちも触ってみたくない?」と俺の手を蕾に押し付けて煽るものだから、つい、な。なんて言い訳をしてみるが、下腹部の熱は治まらない。

どうするかなあ。
初めての割りに素質があったのか、もう挿入できてしまいそうだ。普通は何回か慣らすもんだけどこんなに感じてるし…、いやいやダメだろ普通に。本能が挿れる方向に持っていこうとするのを理性で食い止める。喘いでいる迅は初めての感覚に戸惑っているようで、半ば苦しげだ。それでも俺の為に受け入れる準備を頑張ってくれているのだから、俺も我慢するべきだろう。

ゆっくり指を抜くとそれすら感じるのか、聞こえてきた甘い嬌声に少しだけ決意が揺さぶられた。…少しだけな、うん。


「は、あ…っ、はあ、…___、さん、」


不安そうな迅の額に浮かぶ汗を舐めとって、キスしてやる。よしよしと頭を撫でてやると、迅はほう、と力を抜いて息を吐いた。健気なやつだなあ。やっぱり迅に無体は強いれない。なるべく優しく、声を掛ける。


「今日は挿れないから力抜け。イッたら一緒に風呂入ろうな」


ちゅ、と真っ赤に蒸気した頬にキスをして、今にも達してしまいそうな迅の熱に手を伸ばす。触れる一歩手前で腕を掴まれた。


「迅?」

「……っおれとじゃ、したく、ない?」


『こういうことおれにしたい?』

そういえば事の発端はそれだった。すっかり忘れていたため、少し思い出すのに時間が掛かったのだが、その間を悪い方にとったらしい迅の青い瞳からボロボロと涙が溢れた。


「っ、おれは、___さんと、したい、のに、…っう、」


俺の腕から手を離して両手で顔を隠した迅は、もう___さんなんか知らない、触るな、出ていけ、と涙声でぐずりだした。

……ああもう本当、お前って俺のツボを突くのが上手いな。

熱い息を静かに吐く。知らず知らずにゴクリと生唾を飲んでしまったが、幸いにも迅には聞こえなかったようだ。泣いている迅に気づかれない内に手早くコンドームを着けて、迅の足を抱える。今のはお前が悪い。


「っわ、なにし、、っあ!、ッーーー!!」


ぎゅうう、と熱い肉壁が締め付けてくる。ああくそ、締め付け過ぎだろ。宥めるように迅に何度もキスをする。何とか力を抜いてもらってから、迅の泣きそうな顔を見つめる。


「…バカいうなよ、俺も悠一としたいに決まってるだろ?」

「っ、…___さん…、」


うれしい、と小さく呟かれた声にまた俺の熱量が増した。それを感じたのか迅は小さく声を上げて、顔を赤くする。可愛い。欲望のままキスしていると、ふと言わなくてはならないことを思い出して口を開いた。




「あとこれ、まだ半分しか入ってねえからな」


そう言い終わるか終わらないかぐらいで、力の抜けきったそこを穿つ。ぬぢゅう、と酷い水音がした。迅は背を反らして俺に縋りつく。


「っ〜〜〜!、っあ、あ、あ、は…っ」

「っ、はあ……、気持ちいいな、迅」

「わか、んな、」


根本まで入った俺のものをぎゅうぎゅうに締め付けながら、耐えるように目を瞑っている迅。あーヤバイ、その顔ハマりそうだ。腹いっぱいに異物が入ってきて苦しくない筈がないのにな。愛しさが込み上げてきて、キスをしようと身を乗り出すと小さく悲鳴が聞こえた。


「だめ、う、ごかな、で、っ、だめ…っ」

「つってもなあ、俺は悠一とえっちなことしたいから動くぞ?」

「、は…っずるい、って、、___さんのばか…」

「読み逃したか?」


くつりと喉で笑いながらキスをすると、返事がわりに背中を引っ掻かれた。あー、明日迅は暗躍も防衛任務もナシな、けってーい。


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