WT尊 かれのみぞしる



唯我尊がA級隊員になりたかった理由
夢小説というよりただの妄想。


1、唯我尊はヒーローになりたい

四年半前の第一次近界民侵攻。人々に痛ましい記憶を刻みつけたその日、唯我尊は三門市のとある超高層ビルの高級レストランに足を運んでいた。見たこともない大きなロボットのようなものから人々が逃げ惑っているのが、美しい景色を一望する為のガラス張りのせいで嫌に良く見える。地獄だ。唯我は身体の震えが止まらない。もしも父が、友人が、使用人の誰かがあの中にいたら。

「尊、ヘリコプターがそろそろ屋上に着くはずだわ。行くわよ」
「は、はい…っ」

聡明な母がボクの手を強く引く。ボクの手も母の手もガタガタと震えている。傍に控えていたボディーガードが慌ただしく連絡を取りながらボクと母を屋上へと誘導する。どうなってしまったんだ。どうなってしまうんだ。怖くて仕方がない。屋上に着いて、ヘリコプターを待っていたそのとき。

「なっ、なんだいあれは!!」

とてつもなく大きさの平たいロボットがこのビルに向かってきている。このままじゃこのビルは…!

「クソうなぎパイめ!!」

緊張感のない変な罵声とともに空中に薄い板のようなものがいくつも出てきて、それを利用して1人の男…いや少年が地上から一気に高層ビルの屋上まで跳ねるように駆け登る。屋上に足を付けたかと思うとしゃがみ込み、ガチャリと物々しい銃口をロボットに向ける。

「___現着!沢村さーん!西北でオッケー!?……リョーカイ!撃ちますよっと!」

ドォンと地鳴りのような音に思わず耳を塞ぐ。続いて2発分の銃声が響く。ロボットは重ねて銃撃を受けて、威力によって川の方へ飛んでいく。訳が分からない。少年はそのままヒラリとこのビルよりやや低い建物に移動して、また銃を構えて撃っている。どうやら地上にいるロボット達を倒しているらしい。こんな、ことが。

「ヘリコプターが来たわよ尊、早く」
「っ、は、い」

母に引っ張られてヘリコプターに乗り込む。彼は戦っているのに、ボクは。

ボクも、彼のようなヒーローになりたい。




2、唯我尊は許嫁に見栄を張る

出水公平はそれなりに自身の後輩にあたる唯我尊を可愛がっている。そりゃあ金持ちを鼻にかけた嫌味なヤツであることは確かだが、意外と素直だし、リアクションおもしれーし、金持ちの息子の割に気安いし。

だが、女の子、それもとびきり可愛い超おれのタイプな子にウザ絡みしてるのは頂けない。

「ぅおいコラ唯我あぁぁ!」
「おぶっ!」
「きゃあっ!」

おれの飛び蹴りがクリティカルヒットし、唯我はドシャアと崩れ落ちた。つか今「きゃあ」って聞こえた!マジ可愛いなこの子!!

「大丈夫か?悪いなウチのお荷m…」
「尊くん!!!大丈夫!?ケガはっ?」

あ、ヤバイ。これもしかしなくても知り合いか。

「ありがとう___、けれど心配ないよ。なんせボクはA級1位なのだからね」

トリオン体のお陰だろーが。

「尊くん…!そうよね、ごめんなさい。尊くんは小さい頃から人一倍強くて優しくて…ってやだ、私ったら人前で…」

かああ、と顔を赤くしながら反省してる少女は大変可愛らしいのだが、聞き捨てならない。唯我が?人一倍強くて??優しい???

「ああ出水先輩紹介が遅れましたね。こちらは___。ボクのフィアンセです」
「は、初めまして」

なんてこった。


3、唯我尊は純粋である

(1、のヒーローになりたいと似通ってる)
昔から教育的に特撮ものは見せてもらえなかった。けどやっぱり男の子なのでヒーローへの憧れは持ってる。よってボーダーかっこいい!!黒ロングコートかっこいい(遅れた厨二病)!A級1位がいい!


4、唯我尊は狡猾である

金持ちというのはそれだけでステータスとして確立する。全ての、とまでは言わないが、大多数の人間は金持ちというだけで唯我尊を持て囃した。
しかし、金持ちである唯我尊の周りは僅かな差こそあれど皆同様に金持ちであった。財閥の御曹司。そんなものはいくらでもいる。

ボーダー隊員はどうだ。
ふと思い立った。金持ちでなければ、頭も顔も体格良くないものが、その肩書きだけで優遇され、そして情景と期待を集めている。

ボーダー隊員、それも生半可な位では逆に「唯我」の名に傷がつく。そう、ボクにはA級1位が相応しい。

唯我尊はより優位に立つためにA級1位を手に入れた。


5、唯我尊の胸には穴が空いている

唯我尊は第一次近界民侵攻でとてもとても、それこそ自分の命と引き換えにしてもいいほどの大切な人を亡くしている。
人には防衛本能というものがあるようで、かの大切な人を亡くしたショックで唯我は第一次近界民侵攻をあまり覚えていない。幸せな記憶しかないことは幸福であった。

ただぽっかりと、胸に穴が空いている。

きっともうひとつでも同じように穴が空いてしまえば、唯我尊は死んでしまう。唯我尊は自分が死なないために、もう誰も喪わなずに済むようにボーダーに入ったのだ。


(尊くんはどうしてA級1位になりたかったのか考えるだけで1日潰れるから罪深い)

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