青い両想い




ずっと好きだった。きっと一目惚れというやつで。そんなことも知らずにそいつは馴れ馴れしくスキンシップをとってきて、無邪気に笑いかけてきて、どんどん俺を泥沼に引きずり込んでいく。



「___ちゃーん!」


背中にドンッという衝撃と共にそう耳元で叫ばれる。耳がバカになりそうだ。


「いったい徹」


ぺしりとセットされた茶髪をはたく。ゴメンゴメン、なんて軽い謝罪をしながら上目で見上げられる。、…可愛いなぁ。心臓をきゅっと締め付けられたような感覚に目をつぶって、小さい頭をグシャグシャにかき混ぜる。


「ああ゛ーっ!チョット___ちゃん!セットぐちゃぐちゃにしないでよ!」


もう!と怒りながら俺から離れて髪を直す徹。伏し目がちになりながら拗ねたようにしている徹にまた心臓がきゅっとなった。その顔はズルイ。


「また及川くんが___くんにじゃれついてるー」


クスクスと周りの女の子が笑いながらそう言った。徹はパチリと一回大きく瞬きしたあと、破顔した。


「だって俺___ちゃんのこと好きだからね!」


ピースを女の子達に突き付けながら、徹が爽やかに笑う。ああまたバカなこと言ってる…。耳が熱くなってきたけど、知らないフリをする。もちろん女の子も好きだよ、なんてファンサービスをしている徹を引っ張って帰路につく。次は徹に引っ張られて徹の家にお邪魔することになった。



「徹さあ、好きとか変なことあんま言うなよ」


和室の、少し散らかってる男子高校生らしい部屋でゴロゴロしながらそう言うと、徹は指先で回していたバレーボールを止めた。器用だな。


「えー?だって俺が___ちゃんのこと好きなのはホントだし」


何でもないふうにそういった徹に、胸がぐっと詰まる。好きで好きで堪らなくて、どうにかなってしまいそうだった。

音もなく、唇と唇を重ねるーーー、なに、して、


慌てて離れると同時に、ぼろっと徹の瞳から涙がこぼれ落ちた。


「ごめ、ごめん…っ!」


何してるんだ、本当に。今まで積み上げてきた信頼をぶち壊すような最低なことをした。ぼたぼたと落ちてくる涙に指先が震える。その指で鞄を引っ掴んで出ていく。最悪だ、もう、徹とは二度と、

扉に手をかけたとき、後ろからいつものようにーーーいや、いつもより強く抱きつかれた。


「ちがう、あやまんないでよ、おれ、うれし、のに、」


ぐすぐすとくぐもった涙声が聞こえる。背中が少しずつ濡れていく感触に、どうしようもなく愛しくなる。


「…___ちゃん」


ねだるように名前を呼ばれて、振り向かないわけにはいかない。抱き合うようにして、彼の頬を拭う。


「…徹、好き」

「うん…、俺も___ちゃんのこと好きだよ」


さっきも言ったけど、なんて照れ隠しに茶化す徹の目元は赤い。俺はもう一度、キスをした。


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