ガララララッ 「ふんふふーん♪ふんふんふ、」 バァンッ!!!「おわ!!???」 なになにこわい!!突然のことに何がなんだか分からないまま反射的に身を竦める。…追撃はこない。詰めていた息を吐き出しながら、思わず瞑っていた目をゆっくり開ける。見慣れたの濃灰色のシックなワイシャツが見えた。あ、これはヤバイ。恐る恐る見上げると、匡貴が極悪人の顔付きでおれを見下ろしていた。 おれさっきまで風呂でリフレッシュしてたのに…、風呂上がりに恋人からガチ切れ壁ドンって…ストレスマッハ…。つーかせめてタオルくれよ、おれフルチンだよ、なにこれこわい。 「ま、匡貴クン…?」 「おまえ、よっぽど死にたいらしいな」 絶対零度の眼差しに温まったはずの身体が芯から冷え込んだ。風呂に戻りたいのを我慢して、匡貴がおれを殺したくなる原因を必死に考える。えーっと確か一週間ぐらい前は匡貴のジンジャエールを飲んじゃって殴られたな。その前はランク戦で玉狛第二をベタ褒めしてたら蹴られた…いやあの子ら普通に凄いでしょ、だってまだ中学生だよ?強過ぎてビビったわ。 未だに匡貴の沸点がよく分かってないおれでは匡貴の怒りを読み解けず、とりあえず申し訳なさそうな顔を作るしかできそうに無い。チラ、と匡貴を見ると怒気が増した。多分おれの「とりあえず申し訳なさそうな顔しとくか」って考えが読まれたんだと思うこわい。 ずい、と目の前に突き付けられたのはおれの携帯だ。おま、ナチュラルに人が風呂入ってる隙に携帯見やがって…。と思ったけど当然口には出せなかったこわい。大人しく携帯を見る。 液晶はメール受信画面を写していて送信元は あーたんハート……内容は デート楽しかったよありがとうハート、ホテルでの激しいエッチを思い出して、あーたんはまたエッチな気分になってきちゃったよハート、あ、今日のデートのことブログに書いてもいいかな?ハートハートハート………。 「今からおまえの去勢手術をする病院を探してやる。懺悔でもしてるんだな」 去勢という単語にゾッとした。匡貴ならやりかねない。こいつは本気だ。というかほんとにお前変なとこ天然だな!! 「いやいやいやいや!これ!迷惑メールだから!!」 匡貴に携帯を突き返して画面を少し下にスクロールすると、このあーたんとかいう女のブログURLが貼られている。見かけ上はただのURLであるそれをコピーしてメモ帳に貼り付けるといかにも怪しいURLが表示される。 ほらな、と匡貴を見ると虚をつかれたというような顔をしてる。あ、ちょっと可愛い。 「………ただの、俺の誤解だと?」 「え、ああ、まあ、そうなる、な?」 つい、と目線が携帯からおれに移る。 「確かにただの迷惑メールだな。俺の誤解だ、悪かった」 「いや、おれもすぐ消せば良かったな。まとめて消そうと思ってたからさあ。勘違いさせて、悪かったな」 「で、いかがわしいページにアクセスした覚えは?」 あ。 ザッと思い浮かぶだけでも十は心当たりがあった。 「あるんだな。」 匡貴の目が獲物を狙う獣のように細められた。あ、これは、ヤバイ。 to list |