WT哲次 のーとがかり




設定↓
学生ボーダー隊員が遠征とか防衛任務とかしていると授業に追いつけなくなる(特に進学校組)ので、それを防ぐために同クラスで最も成績の良い生徒が勉強面で支援することになっている。

例)
・ノートを取る。
・授業中に質問があれば答える(自動的に席は隣)。
・時間があるとき希望があれば教える。

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______は頭のいい子供だった。
小学校では一回だって授業につまずいたことなどなかったし、中学校でも少し勉強すれば満点を叩き出せた。要領の良い、頭のいい子供だった。ーーー相対的に見れば、の話である。進学校である高校に入学した一番初めの実力テスト。担任から手渡された順位は丁度半分だった。

______は要領が良く、頭がいいだけの、ただの凡人だった。


「なあ、聞いた?このクラスで一番順位いいのって荒船だって」

「マジ?あいつ体力測定も凄かったよな」


荒船ーーー、荒船哲次。

暗めの茶髪に凛々しい顔。勉強も、運動も出来る。非の打ち所が見つからない。彼こそが完璧な、天才だ。

その日から___は荒船に憧れている。同じクラスではあったが、凡人にはとても話し掛けられない存在だと、その姿を目で追うだけの日々が続いた。

転機はそれからすこし経ったある日のことだった。『荒船がボーダーに入隊した』。彼は天才だからきっとすぐ訓練生ではなくなるだろう。そうしたらボーダーの任務で授業に出られなくなるから勉強面でのアシスタントがつくようになる。

彼と話してみたい。彼の友人になりたい。ずっと憧れていた。少しばかり要領が良いだけのバカな凡人である俺が彼に近づくには、これしかないように思えた。___が人生で最も勉強した時期が、高校受験はおろか大学受験でもなくこの時期であったのは、これが起因する。



「荒船、お前の勉強面での面倒を見ることになった、「___だろ」…俺のこと知ってんのか」

「2年も同じクラスにいりゃ流石に覚えるさ。学生1位に教えて貰えるなんざ光栄だな。よろしく頼む」


にやりと口端を釣り上げる荒船の笑い方は、悪役のそれと同じだというのに全く嫌味を感じさせない。握手を交わして、隣の席だからよく話すようになって、ノートを貸して、お礼にと放課後ハンバーガーを奢ってもらうようになって、いつの間にか昼飯を一緒に食うようになって、暇な日には勉強会と称して荒船の好きなアクション映画を見て。

今まで話した事がなかったのが嘘のように簡単に打ち解けられてしまって、___はバカみたいだと笑った。

荒船は犬が苦手みたいだ。本人からハッキリとそう聞いたわけではないけれど、何でもないような顔をして散歩中の犬から逃げ回っているのは少し面白い。夏になると体育は水泳かマット運動か選択制になるが、荒船は必ずマット運動だ。アクション映画好きが高じてかとも思ったが、単純にカナヅチらしい。あんなに格好良い荒船が、可愛らしく見えた。

バカみたいだと___は笑った。完璧な天才なんて偶像を見て憧れていた自分がだ。本物の荒船の方が、よっぽど魅力的だというのに。

______の並々ならぬ努力が報われ、そしてその努力を続けることになるのはこのときーーーー荒船に惚れてしまってからである。


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