◎すき 「___さんおれのこと好き?」 にやにやと口元を歪ませている迅は、おそらく己のサイドエフェクトを使って未来を視ているんだろう。何となくズルイなと思って、迅が視た未来の俺と違うことをやってやりたくなった。我ながら天邪鬼だな。 いつもの俺ならきっと「あーはいはい、好きだぞ迅」とかなんとか言って適当に流すだろう。ってことは全力で迅に応えてやれば良いのか。あー、くそ、あんま考えてると変化した未来を視られちまうな、もういいか。 迅の右手を左手で握って、右手を迅の後頭部に回す。髪を梳いてやりながら優しくキスをして、にこりと甘ったるく笑って見せる。似非臭い笑みになってるだろうが迅は俺の顔も好きだから問題ない。 「好きだ、悠一。悠一は…?」 そっと囁くように吐息混じりに言葉を放つ。ピクリと身体を揺らした迅が、潤んだ瞳で俺を見上げる。ふ、どうやら未来を覆せたらしい。どうだ。 「っお、おれも、___さんのことしゅき…っ、…ッ〜〜〜!」 「………。」 今、しゅきって言ったか、こいつ。しゅきって。 ………しばらくフリーズしてしまったが、理解すると笑ってしまいそうになる。本当に可愛いやつだ。羞恥で悶えている迅を膝に乗せて顔を覗き込む。ああ多分俺は今、最高に悪い顔をしているな。 「へええ?迅くんは俺のことがしゅきなんでちゅか〜?」 「っ、___さんホント良い性格してるね…!」 じとりと涙目で睨まれても痛くも痒くもないのだが、流石に少し可哀想になってきたからもうからかうのはやめてやる。目の端に溜まっている水分に口付けて吸い取ると、迅の水色の虹彩がクリアに見えた。 「ウソ。可愛かったぞ」 ご機嫌取りに見せかけた本心だったが、迅にはご機嫌取りにしか見えなかったようでポカポカ叩かれた。迅が、ちょっと読み逃してただけだよ!なんて減らず口を叩くものだから、ついに俺は噴き出してしまう。 たまには迅を出し抜いてやろうと思ったけど、惨敗だな。俺はどうやら迅には勝てないらしい。 to list |