酩酊ブランダー




「ゆーいちはせかいいちいーこだなあ」


でれでれ顔の___さんがクッションに撫でながら話し掛けている。確かにそのクッションはおれの髪色にそっくりだけど、それじゃあ生首だよねおれ。

酔っ払った___さんは本当に面白い。それこそおれのサイドエフェクトでも予知しきれないことをしでかす。この前は城戸さんを自分の兄と間違えて「小4のときのプリンの恨み!」なんて叫びながら殴りかかっていたし(忍田さんに返り討ちにされていた)、その後太刀川さんとマジックで顔に落書きをし合ってたっけ(忍田さんにきっちり絞られていた)。

何だかんだ可愛いものばかりだから、ボーダーじゃお約束の名物のような出し物のような、酔っ払った___さんはそんな扱いだ。素直で笑い上戸。子どもみたいでかわいい。


「ありがと。___さんもいい子だと思うよ」

「ばかやめろよはずかしい!」


ボスボスとクッションを叩きながらにやにやきゃあきゃあ嬉しそうに笑っている。そのクッションおれだった気がするけどまあ楽しそうだからいっか。

酔っ払った___さんは可愛くて好きだ。いやいつもはカッコ良くて、それはそれで大好きなんだけどね。普段は俺の方が年上!(2つしか変わんないのに)ってカッコつけてるから、その分ギャップで余計可愛く見えるというかなんというかうん。

にこにこゴキゲンな___さんがまたクッションを撫でだした。


「やっぱりゆーいちはいーこだな。こんなよっぱらいにもやさしーし」

「___さんだからだよ。太刀川さんが酔っ払ってたら放っておくし」

「そーやっておれのことよろこばせてくれるし」

「いやー___さんが喜びやすい性格なだけでしょ」

「えっちのときなきながらだきついてくるのもかわいーし」

「え、」


じわ、と体温が上がった。そんなことしてたんだおれ。いつも何がどうなっているのか分からなくなって、怖くて___さんに縋るのに必死で何も覚えていないから、そんな、恥ずかしいこと。勝手に気まずくなって___さんから目を離した隙に、優しい声が聞こえた。


「ゆういち、あいしてるよ」


ちゅっ、


「っ!、___さん…っ!」


キスをして満足そうな___さんは、電池が切れたかのようにパタリと寝てしまった。おれはたっぷり溜め息を吐いて、___さんに詰め寄る。


「…クッションじゃなくておれにキスしてよ」


やり直し。ちゅ。

酔っ払った___さんは素直で笑い上戸。子どもみたいでかわいい、けど、やっぱりキスをしてくれる___さんが一番好きだな。


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