HQ徹 ひつよう


軽い暴力有り


弱い人だった。


天才に押し潰されそうなその青年は、歯を食いしばって血を滲ませて震える足で立っていた。

痛々しい笑顔で彼は言った。

負けちゃった、と。


「及川……、


諦めなよ。凡人は天才を超えられない」


がつり!

口に血の味が広がる。勢いに負けて倒れ込んだから、体のあちこちが痛い。


「っさい、うるさい…!」


ゴッ、ゴッ、

胸ぐらを掴まれて何度も何度も殴られる。顔中が熱くて痛い。及川はガタイいいもんな、当然か。息苦しい。歯がグラグラする。


「お前に!___に!何が…っ!」


泣きそうなーーー、いや、もうぐちゃぐちゃに汚らしく泣いている及川が俺に縋り付く。振りやんだ拳にようやく頭が痛みを処理し始める。


「も、やだ…っ、たすけて…!」


ぐちゃり。

潰れてしまった彼に俺は微笑む。


「いいよ、俺が助けてあげる。」


殴られれば殴られるほど、俺は及川に認められる。離れられない関係になる。ほら、もっと殴ってよ。

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