opロシナンテ わるいひと




「悪いこと」が好きだった。「悪いこと」は悪いことをしたわりに良い思いが出来るようになっているからだ。金が欲しい?盗めばいいさ。女が欲しい?じゃあ男を殺しちまえ。なんて簡単なことだろう。「悪いこと」は「良いこと」をするよりずっと楽に良い思いができる。道徳だなんだってそれがどうした。そんなもん1ベリーにだってなりやしねぇ。そうだろうコラソン?海軍なんて硬っ苦しい組織で小せェ歯車としてチマチマ任務こなすより、ドフィの弟ってだけで地位が手に入るココの方が良いだろう?何が不満だ?確かにドフィは「悪いこと」をする。それの何が悪い。「悪いこと」をして喜ぶやつだっているんだぞ。…言い方を変えてやる。海軍は「良いこと」しかしないか?何の罪もない民間人をサクサク殺して、ドフィは野放し。それは「悪いこと」だろう?まあ、お前はそんなこと言っても己の正義を貫くんだろうけど。そんなお前なんか消えちまえば良いのに。

「コラソン、好きだよ。愛してる」
『おれも、すきだ』

ド派手なメイクが霞むくらい真っ赤な顔で走り書きした紙をおれに渡すコラソン。それを読んで微笑むと、コラソンも少しだけ嬉しそうに口元を緩めた。紙にキスをして、コラソンを見上げる。

「ああ愛しいおれのコラソン。お前とこのファミリーのためならおれは何だってできるよ」

照れたように視線を逸らすコラソンの唇が、僅かに震える。迷うようにペンをさ迷わせて時間を掛けながら書かれた紙を見て、頭がスッと冷えた。あーあ、ダメだったか。しょうがねェな。少しだけ驚いて見せてから、悲しげな表情を作る。

「コラソン…お前……。いいや、どこかで分かっていたよ。お前は優しいから…。もう何も言わないでくれ。お前と、共にありたいんだ。構わないか…?」

胸にコラソンを抱き締めると、くぐもった声が聞こえる。へえ、こいつの声こんなんなのか。すまない、ありがとうって。お前のドジは一級品だな、ファミリーを裏切る確証のない俺にバラしちまうなんて。まあ流石に三年も愛し合えば裏切るなんて考え付きもしないか。さて、そろそろ離して欲しいものだ。証拠を全部抱えてドフィのところへ行かなきゃなんねぇからな。お前の首はそのあとだ。

「ロシナンテ、愛してる」

これは決して嘘ではないけれど、さよらなだ。おれは「良い人」にはなれないから。あーあ、お前が「悪い人」になれば、ずっと一緒にいられただろうに。

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