無罪リカー




ドンッ おおー!

なみなみに注がれていたグラスを飲み干して、グラスを机に叩くように置くと大学生組から歓声が上がった。うるさい。

もうどのくらい飲んだだろうか。上戸な方だと自覚している自分でも流石に酔が回ってきた。こんなに飲むのは久しぶりだ。ボーダーの打ち上げで金を気にしなくていいからって飲ませすぎだろあいつら。くいっと引かれた腕に心地良さを求めてそれを抱き込む。公平の額が俺の肩にぶつかった。


「うわっ!?ちょ、マジで___さん飲みすぎだから!」

「こーへー、耳元でさけぶな」

「あっ、ごめ、…じゃなくて…!」

「よし___、次これ空けようぜ!」

「太刀川さん!アンタいい加減に…!」

「わりぃな出水ぃ!もう注いじまったぜ!」

「やめて下さいよ諏訪さん!」


俺の腕の中でキャンキャン喚きながら荒ぶる大学生組を止めようと必死な公平。泣きそうな顔がかわいい。学習せずに煩いのは頂けないが。まあそれもあいつらのせいだ。

未成年の公平のグラスにはハイペースで酒が注がれる。上戸の俺が代わりに飲むのを大学生組が面白がって、わんこそばさながらのペースで注いでくるのだ。公平は俺を心配して止めてくれるのだが、その姿がいじらしくてつい飲んでしまうから公平も少しは悪い。可愛いから良いんだけど…っと、風間さんが真顔で飲めと圧を掛けてくるから、仕方なく公平から手を離してグラスを持つ。


「___さん絶対飲むなよ!」

「ばか、おまえのグラスに注がれたら飲むしかないだろ」

「っ、う」


う?

ぼろっと公平の目から水が溢れてきた。え。は?何が起こっているか分からず呆然とそれを見ていると、本格的に俺の胸で泣き出した。サッと酔いが覚めて、慌てて公平をあやしにかかる。ぐずりながら吐き出された言葉は「___さんが死ぬ」だった。不吉すぎる。公平の親友というか悪友というかな米屋に助けを求めて見やると面白がってスマホで写真を撮っていた。鬼かこいつ。


「あー、それ多分アレっすね。ついこの前学校で急性アルコール中毒の講演会聞いたんで、多分それっす」

「その時から出水は___さんのこと心配してました」


笑っている米屋と刺すように冷たい三輪に事情を聞いてやっと理解できた。と同時に俺は決意した。


「公平、分かった。俺はもう酒は付き合い程度しか飲まない」


バッと上げられた公平の顔は涙でぐちゃぐちゃだったが嬉しそうなので問題ないな。問題なのはえええー!?と心底残念がっている大学生組だ。お前らは俺が飲んでも飲まなくてもうるさいのな。


「ということで今日はもう飲まない」

「諏訪さんが注いでくれた分はどうするんだ?」

「お前が飲め太刀川」

「は!?ちょっ、ごぶっ」


太刀川と間接キスは死にたくなるし、元は公平のグラスなのでもし公平と太刀川が間接キスってことになったら太刀川を殺す気しかしないので太刀川のグラスに酒を移し替えて無理やり飲ませる。ごぼごぼ言ってるが知らん。半分以上溢れていたが無視して公平に向き直る。と、ふにゃりと公平が笑った。


「___さんのばか、どうせなら、もーのまないっていえよ。ほんとかっこつかないなあんた」

「………」

「うあ!?」

「俺ら先抜けます、お疲れ様です」

「えっ?あっ、お、お疲れ様です…?」


ぶはっ!と噴き出して大声で笑っているのは米屋だ。三輪はもう俺たちに興味はないようで、大学生組は飲んだくれている。あとは東さんが何とかするだろ。姫抱きにしている公平はまだ何が起こっているかよく分かってないみたいだ。

バカはお前だ公平。なんで今日こいつこんなに可愛いんだ。店を抜け出して、ようやく公平を下ろす。じっと金にも見える茶色の瞳が俺の顔を見てくる。なんなんだちゅーするぞこら。


「___さん顔赤い。やっぱ飲みすぎたんだろ」


からかうように笑った公平の頬にキスをする。ピタリと固まった公平も俺と同じく真っ赤に染まった。


「言っとくが、酒じゃなくてお前のせいでだからな」


prev next
to list


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -