HQ京治 かふぇおれ




不良な先輩と赤葦京治


午前授業終了の号令と同時に鞄を引っ掴んで教室を出る。どうせあの人は授業をサボってるから先にいるだろう。早足になるが、別に早く会いたいとかではなく、単純に人を待たせるのが好きではないだけだ。購買へ走る奴らの隙間を縫って屋上を目指す。

屋上は一般生徒には開放されていない筈だが、先輩は何故か鍵を持っている。拾ったんだよ。そう笑う顔は凶悪で、すぐに盗んだものだろうと察した。まあ居心地が良いので俺も使わせてもらっているけど。怒られそうになれば先輩の名前を出せば免れるだろうし。

ガチャリ。やはり鍵はもう開いている。使われないせいで意外と綺麗な扉を開けて見えたのは、おびただしい数のピアスに、傷んだ金髪。その髪を掻き上げる硬い手にあるタコは、人を殴るときに変な癖がついてるみたいでさあ、なんていう耳を塞ぎたくなる理由でできたものだ。あれ、ワイシャツの端が少し赤黒く汚れてーーー、いや、見なかったことにしよう。


「やぁっと来たかあ」


猛禽類のような鋭い瞳が俺を捉えて、ふっと緩められる。それが嬉しい、なんて。


「よ、けーじくん。遅かったなぁ」
「これでも早い方ですよ」


先輩の隣に座って、鞄から弁当を出す。先輩はズゴゴゴゴと音を立ててカフェオレを飲みながら、俺をじいっと見ている。コンビニのビニール袋がぺったんこなのを見る限り、飯は先に食ったらしい。俺が来るまで待てないのかこの人は。


「けーじくんがモノ食ってんの見るとムラムラする」
「……。心底気持ち悪いです」
「いやあだってさぁ。なんつーのかな、色気?所作が綺麗だよなけーじくん」


す、と俺の箸を持っている手を握って、にんまり悪い顔。一体なんなんだこの人は。睨みつけているその小憎たらしい顔が近づいてくるというのに、俺は動けない。ああ、もう、本当にやめて欲しい。一瞬目を閉じた間に口内に広がったカフェオレは少し苦い気がした。

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