ハイレインは穏やかな暮らしに憧れている。具体的に例を挙げるならば、任務などなく、良人である___とお互いのこと以外何も考えずに、ただただ生温く優しい日々を過ごすことである。たまに己の家族や優秀な部下が遊びにでもくれば、もうハイレインは何も言うことがない。 実際はそんな日々を続けることは不可能である。ハイレインと___が仕えている神の国・アフトクラトルは、次の神となる存在を探し求め、国防もままならないほど他国に遠征している。 しかし忙中有閑、どれほど忙しくとも休みはある。そしてハイレインの優秀な部下であるミラが上手くやってくれているらしく、その貴重な休みは___のそれと重なることが多い。今日も正しくそれで、ハイレインと___はべったり寄り添っていた。 「ハイレイン」 「…ん、…何だ?」 「今寝てただろ」 「……そうだったか?すまない」 自覚こそなかったが、時計を見れば少し時間が飛んでいた。確かに寝ていたようだ。___の体温が心地良いのが悪い。ハイレインはそう呟いてその体温に擦り寄った。 「そんな可愛げのあることも言えるんだな」 喜色を多分に含んだ声。それを吐き出した口がゆっくり近づいてくる。ハイレインは顎に掛けられた指に抗わず、上を向く。甘ったるい表情をした___を捉えて、そっと目を閉じた。 to list |