あさをまつふたり




ばふっ

別段柔らかい訳でもない普通の布団に体を預ける。少し埃っぽい気がしてため息を吐いた。

約二ヶ月の長期任務をようやく終えたのは今日ーーーいや、日付を跨いでいるから昨日のことだ。取り急ぎ簡単な報告だけして直帰したが、やはり長期任務は好きじゃない。潔癖ではないが、流石に二ヶ月掃除してないのは気になる。薄ら溜まっている埃から目を背けて、そのまま目を閉じる。すうっと意識が落ちようとしたとき、気配を感じた。

トントン

どこか篭った間抜けなノック音にやれやれと立ち上がる。限界を超えている身体はのろのろとしか動かないが、向こうはそれを承知で来たんだから平気だろう。

ドアを開けると男が一人立っていた。月光を反射する銀髪が眩しくて、目を細める。


「よっ、___」

「…カカシさん、お久しぶりです」

「あらら、そんなに疲れてるって相当面倒な任務だったんだ?」


勝手知ったるなんとやらで家主を差し置いてずかずか家に入ってくるカカシさん。任務は勿論だが今のカカシさんにも大分疲れてる。いや、良いんだけどね恋人だし。前に気配を完全に断って窓から勝手に侵入されたことがあったから、それに比べれば随分良心的だ。ちなみにそのときは敵かと思って火遁を使ったため、部屋の窓際は煤けている。そろそろ直した方がいいなあれは。


「面倒というか、第三勢力と邂逅してしまったのでそれの始末に少し」


その際に一人重症を負ったのを思い出して頭が痛くなってきた。調子に乗るからそうなる。あのメンバーじゃあ死人が出なかっただけマシだな。まあもしカカシさんがいれば、怪我人すら出なかったのかもしれないが。

お疲れ様、という労いの言葉に合わず、するっとしなやかな両腕が首に絡んできた。体が密着する。あ、そういえばまだ風呂に入ってない。


「カカシさん、汚れますよ」

「そんなことより言うことあるでしょ」


寝たい、と開きそうになった口を閉じる。恋人が抱きついてきてるのに、そんな無粋なことを言えるほど子供じゃない。
晒されている形の綺麗な耳に口を寄せる。


「…ただいま帰りました」

「ん、おかえり」


途端に嬉しそうな声音になるものだから、少し疲労が緩和された気がした。密着したままベッドに入ると、心地よい人肌にうとうとしてしまう。カカシさん気持ちいいな。


「___、」


唇を柔らかい何かが覆った。うっかり閉じていた目を開けて、眉目秀麗なその顔を押し退ける。酷いなあという声には欠片もそのニュアンスはなくて。そろりと服の中に入ってきた手を容赦無く抓ってやる。


「…疲れて勃つものも勃たないんで勘弁してください」

「えー?どうしよっかなあ」


クスクス笑う声に、気分が良くなる。何だろ、この人の声に癒し効果でもあんのかな。ただ俺とイチャイチャしたいだけのカカシさんの手を自分のそれと絡めて封じる。これで何も出来まい。


「カカシさん、好きですよ」

「…やり直し」

「はは、やり直しは起きたらさせてください」


だから、俺が起きるまでずっといてくださいね。カカシさんの顔が嬉しそうに緩むのを見て、俺は目を閉じる。起きたらすぐ言ってあげなきゃなあ。愛してるなんて、今更言わなくても分かってるだろうけど。


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