しあわせなふたり




目を開けて、最初に見えるのが好きな人の寝顔だなんて、こんなに幸せなことってないだろう。いつも不機嫌そうなしかめっ面も、寝てるときだけは穏やかで眉間には皺一本存在しない。どこか幼いそれは自分だけに見せる特別なものだと知っているから、俺はこの顔を見る度に胸がいっぱいになる。


「…___」


込み上げてくる愛しさに耐え切れずに零したそれは、自分でも恥ずかしくなるくらい熱がこもっていた。だって好きなんだからしょうがないだろ?誰に言い訳するでもなくそう一人ごちる。どうしよっかなあ。朝ご飯作ったげた方が良いんだろうけど、この状況はみすみす手放すには酷く惜しい。

考えるより先に目の前の身体に手が伸びた。残念ながら誘惑には勝てなかった。名前を呼ばれたのにぴくりとも動かない___の薄っぺらい胸に手を滑らす。トクントクンと規則的なその鼓動は、人間の性なのかとても安心する。

っていうか今更だけど俺たち裸なんだな。まあ昨日は裸になるようなことをしたから、当然といえば当然だ。自分の身体を見下ろすと信じられないくらい跡をつけられていることに気づいた。少し恥ずかしいけど、その分愛されたのだと思うと嬉しくなる。

俺も付けてみたくなって、___の首元に顔を寄せる。筋張ったそこに口を付けて吸おうとしたそのとき、未来が視えた。跡をつけるときの痛みで___が起きてしまう。…何だか勿体無い気がして、そのままそっと唇を離すことにした。まあいつでも付けれるし。手持ち無沙汰に彼の耳にキスをする。


「___、好きだよ」


ゆっくりそう囁くと、___はころりと寝返りを打った。仰向けから俺の方に向いて、その流れで体の下側になった右腕がふいにぼすりと俺の真横に落ちてきた。子供みたいだな。普段からは想像もつかないほど可愛らしいそれに忍び笑いを零す。

___の腕はレイジさん程じゃないけど綺麗に筋肉がついていて、頼もしい印象を与える。その筋肉も力を入れてない今はただ弾力のある柔らかい肉だ。これで寝たら気持ちよさそうだな。

……腕枕か。

それを思いつくともうその腕はいつになく魅力的に見える。もちろんそんな俺が好奇心に勝てる訳もなく、俺は喜々として___の腕に頭を乗せた。…近いなー。___の方を向いて寝転がったせいで、___の顔との距離は10センチもない。腕枕ってこんな感じなのか。うわ、なんか照れる。普通ならする側であろうそれは、守ってもらってる感が強くてドキドキしてしまう。

あ、___の唇荒れてる。カサついているそれは皮膚が割れて痛そうだ。唇が乾燥しているときに舐めるのは良くないのに、昨日散々キスしたからなあ。これはしょうがないのかもしれない。昨日を思い出して、あの少し硬い唇にキスをしたくなってきた。体を少し___の方に寄せて、顎を上げる。もう少し、のところで___の腕が俺を抱き込んだ。俺の唇は___の頬をかすめ取って、そのまま肩先に鼻を埋めることになった。

ぶわりと何かが込み上げてきて、息が詰まる。俺の恋人は寝てるときでさえも俺を喜ばすのが上手だ。本当に、何でこうも俺のツボを抑えてるんだか。

俺だけ喜ばされるのはどうにも納得いかないから、朝の生理現象で緩く勃っている___のそれを見やる。これが昨日入っていたと思うと顔が熱くなるが、気にしない振りをしてそこに足を伸ばす。ぐりぐりとゆっくり刺激すると、目の前の___の瞼がふるふると震えた。あ、起きる。


「……ん、ん…?……っ、こら、…ゆーいち」


目覚めると同時にきゅ、と眉を寄せた___。その様子は可愛らしいのに、掠れた声が妙に色っぽくて、そのアンバランスさに身体が更に熱くなる。それを隠すように笑いながら少し硬い唇にキスをする。


「おはよ___」

「っはあ、…そうじゃなくて、…っん、…あー、もういい」


そう言い放った___の目は熱が燻っていて、あ、やばいなと思った。スルリと___の足が絡んできて、ときどきその足が俺のに当たる度にどうしようもなく反応してしまう。


「ッ、は、ぁ…っ、___っ」

「…そんなに俺を喜ばしてどうするつもりなんだ?」


薄く笑っている___の首筋に、それはこっちのセリフだと噛み付いた。


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