しねた はらはらと落ちる涙が綺麗で、ついその頬に手を伸ばした。彼はその手をとって、ゆっくり、目を閉じる。 「綺麗…、好きだよ孫兵」 孫兵は穏やかな顔のままただただ涙をはらはらり。口元だけで下手くそに笑って、私の青白い手に擦り寄る彼は、毒蛇などより猫の方がよっぽど似合いそうなものだ。 「___はずるい。好きなら、ぼくをおいて、いかないでくれ…」 またそんな無茶を。孫兵は誰よりも一人を好む癖に誰よりも独りを怖がる。そんな素振りを見せることはあまりないけれど、ジュンコたちを大切にしているのも独りにならないためだ。忍たまはいつ死んでも可笑しくない。だからひとつでも多く大切を作って、傍に置いて、独りにならないようにしていた。それを知っていたのに、それなのに、ごめんなあ。 「馬鹿をいうな。お前がこちらに来るのは50年後以降と決まってるんだ」 「…長過ぎるよ」 「……ごめんな。…いっとう好きだったよ、孫兵」 抱き締めたつもりだったけれど、もうその腕は透けていて、何も掴めやしなかった。泣くなよ孫兵、またいつか再会したときに涙が枯れてたら承知しないからな。 to list |