「リーマス、俺と結婚してくれ」 椅子に座っているリーマスの前に跪いて差し出したそれは、リーマスに似合うようにとオーダーメイドした細身の指輪。華美なものを好まないリーマスと俺のためだけに作られた、金のシンプルな指輪。リーマスは口元を手で覆って、今にも泣き出しそうな顔をしている。 「リーマス」 「うれ、しいが、…駄目だ。しまってくれ___」 目を伏せて、指輪から顔を背けるリーマス。理由は分かりきっている。付き合うときもそうだったのだ。自分が男、それも人狼であることで俺や俺の家族に向けられる目が変わると、そう彼は怯えている。そんなもの、リーマスといられなくなるくらいなら大歓迎だというのに。 「リーマス、俺は君と結婚したい。君としか、結婚したいと思えないんだよ」 「やめてくれ___。私は男だ。それもただの男じゃない、人狼だぞ。そんなのと結婚するだなんて、とても正気じゃない」 椅子から立ち上がろうとするリーマスを椅子に押さえつける。体格差はあまりないとはいえ、リーマスのジャケットの内ポケットには杖が入っている。杖を使われれば、流石に俺は諦めるしかない。けれどそうしないということは。全く、リーマスは昔からこうだからタチが悪い。自惚れて、しまうじゃないか。 「男で、人狼で?それが何だっていうんだ。こうやって押さえつけることも出来るし、手を繋ぐことも出来る。キスも、もちろんセックスだってね」 「っ、でも」 「子供は、リーマスと俺の子じゃないならいらないさ」 「、___…っ」 「ほら、何も問題ないだろ?」 こつりと額を合わせると、リーマスの目から涙が一筋流れた。こんな綺麗な人と出会ってしまったら、他の人なんかと付き合えるわけないのだ。その美しい顔を眺めていると、リーマスは顎を持ち上げて、俺にキスをした。 「___、もう一度、言ってくれないか」 「ああ」 「リーマス、俺と結婚してくれ」 「っ、…喜ん、で」 ぼろぼろと泣きだすリーマスに笑いながら、その左手の薬指に指輪を嵌めた。愛してる、リーマス。ずっと、ずっと、一緒にいよう。 to list |