澄んだ空気が好きで、僕はよく夜に散歩する。夜っていっても、母さんが心配するから9時とかそんなところだ。それでも冬だと真っ暗で、星がちょこっと見えて楽しい。最近はとある目的があって、学校まで足を伸ばす。校門に背を預けて、じっと待つ。少しすると、ざっざっと歩く音が聞こえた。時計を見る。8時半過ぎ。 「鉄、お疲れ」 「おー___、迎えサンキュ」 いつものニヤニヤとした笑みじゃなく、屈託のない笑顔にキュンとする。可愛いなあ。その顔はとっても嬉しそうで、僕も嬉しくなる。鉄のエナメルのカバンを持ってあげて、僕の右手と彼の左手を繋ぐ。最初は外だぞ!と抵抗されたものだけれど、もう慣れたようで、自然と繋ぐようになった。 「一昨日くらいからめっきり寒くなったなー」 「だね。でも来週からもっと寒くなるらしいよ」 「マジか、凍えちまうな」 「もっとくっつけば問題ないんじゃない?」 「っなに言っ、んうっ!、〜〜〜っ」 赤い顔で文句を言おうとしたらしい鉄の口を塞ぐ。僕は平均程しか身長がないから鉄にキスするのは大変だが、僕はこれが大好きだ。見た目通り薄い鉄の唇は意外に柔らかくて、甘い、気がする。それに恥ずかしがってる鉄の顔がとっても可愛いのだ。何度も吸い付いていると、可哀想なくらい顔が赤くなっていたから解放してあげた。 「っ、はあっ、…おまえ、なあ…っ!」 「そんなに苦しかったなら嫌がってくれて良かったのに」 薄っすら涙目で僕を睨みつける鉄。全く怖くないそれにクスクス笑って、いつの間にか外れていた手を繋ぎ直す。鉄はうろうろと目線を彷徨わせて、地面に落とした。 「……嫌がるなんて、嘘でも出来ねぇよ」 無意識だろうか、ギュッと力の入ったその手は熱過ぎて、僕は笑ってしまうのだった。 to list |