子供が、戦っている。自分よりいくつも、もしかしたら一回りも年下の彼ら。未発達なその小さな身体で、人々を守るため近界民と戦う。戦うためだけに、彼らは訓練と努力を積み重ねる。じゃあ俺達は。大人は何をしているんだ。何ができる。子供達に戦う術を与えて、鍛えさせて、戦わせて。何も、出来ないじゃないか。 「すみません忍田先輩。俺、もう無理です。彼らはまだ子供で、守られるべき存在である筈なのに、どうして、こんな」 「…___、それでも、彼らは戦ってくれている。三門市の、人類の、為に。彼らが少しでも傷つかないようにすることが、お前の使命だ。そうだろう?」 「……すみません、でも、俺にはもう、」 分かっている。トリオン器官を使うということすら分からない大人達は戦力にならず、若い彼らに望みをかけるしかないのだ。分かっている。分かってるんだよ。けれど、彼らに関われば関わるほど、俺は己の無力さとその遣る瀬無さに溺れるのだ。 「おーい___さーん!」 「あっ、おれより先に声かけてんじゃねーよ槍バカ!」 「陽介、公平。相変わらず元気だな」 「そうなんすよ、ってことで久々に相手して下さい」 「___さん、最近全然模擬戦してくんねーから暇なんすけど」 片方は人懐っこく笑いながら、もう片方は子供みたいに拗ねた顔をしながら、両サイドから責め立てられて、俺は苦笑する。こんなに慕ってくれる彼らが、大切にならない筈がなかったんだ。 「悪いけど、俺、ここ辞めるんだ。もうお前らと戦えない」 なんで、と、彼らはまだ少し幼さを残す顔を驚愕に染めた。二人の頭を撫でてから、歩き出す。 何処か遠いところへ行こう。もう何もかも、忘れたいんだ。自分がこれほど弱いなんて思ってもみなかった。けれど、この弱さはきっと正しい。幼い彼らの、例えトリオン体であろうと、あんなにも無惨な姿を、もう見たくない。ましてや、訓練とはいえ、この手で殺すなんて。 見下ろした両手が、血塗れに見えた。 to list |