butler | ナノ




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「へぇ……こたつか。なんだか懐かしいね」
「やっぱり冬はコレで暖まらないとって思って。あ、ユウお兄ちゃんお茶淹れるから先に入って待っててね」
「うん、ありがとう」


ユウお兄ちゃんのお仕事がお休みの今日、久しぶりに私のアパートで一緒に過ごす事になり。
お城で過ごすのとは違い、狭いアパートの一室にユウお兄ちゃんがいることがなんだか擽ったいような、でもやっぱり嬉しくて。

ここではお城でのユウお兄ちゃんではなくて恋人としての素のユウお兄ちゃんが見られる気がする。



お城でグレンくんに仕えている時のユウお兄ちゃんの凛々しい姿を見るのも好き。


そして、





「あ………」




私の前で無防備な顔で眠る素のユウお兄ちゃんも……好き。





「寝ちゃってる……」


こたつに入り、横になっているユウお兄ちゃんは気持ちよさそうに眠っていた。
なかなか見られないこの光景、なんだか微笑ましくてそんなユウお兄ちゃんが可愛く見えて。


「お疲れ様……ユウお兄ちゃん」


そっと用意したお茶をテーブルに置き、ユウお兄ちゃんの寝顔を覗き込む。
こたつで温まったのか、ほんのり色づいた頬にはりついた髪の毛をそっと指先で払いのけてあげる。
綺麗な黒髪が少し乱れて少―しだけ開いた唇。
お城で会う時はいつも執事服だけど今日はお休みということもあってラフなユウお兄ちゃんの姿。
それが恋人であるユウお兄ちゃんが私の前で見せてくれる姿で。
そんなユウお兄ちゃんを独り占め出来ている今この時がとても幸せ。


「ん……」


頬に触れて起こしてしまったのか、ユウお兄ちゃんが眩しそうに目を開け、ぼんやりと視線を彷徨わせる。


「あ………俺、寝てた?」
「ふふ、ちょっとだけね。疲れてるんだよ、気持ちよさそうに眠ってた」


ようやく私と視線が絡み少し笑うともそもそとこたつの布団から腕を出してきて…





「きゃっ、」


その腕に引き寄せられ、いつの間にかユウお兄ちゃんに抱きしめられてしまった。


「ユ、ユウお兄ちゃんっ!?」
「んーー…あったかい………」


まだ寝ぼけてるのか、ふにゃっと笑いながら私を抱きしめすりすりと髪の毛に顔を埋めるユウお兄ちゃん。

私はというと、不意打ちのユウお兄ちゃんの体温に頭がついていかずただ真っ赤になるばかりで。





「いいな…こんな風にゆっくりしたのはいつぶりだろう…」


ぽつりと呟き、ゆっくりと息を吐くユウお兄ちゃん。
トン、トン、と小さい子をあやすように私の背中をやさしく摩る。
その仕草がとても心地よくて。
触れる箇所から伝わるユウお兄ちゃんの体温はこたつに入っていたせいか少し高めで。
間近で聞こえるユウお兄ちゃんの息遣い、そして優しく触れる手。



すべてが私の心を溶かしていく。

同じように私もユウお兄ちゃんの背中をトン、トンと。
ぎゅっと抱きしめる腕に力が込められた。


「俺……ほんとに幸せだよ……」
「ユウお兄ちゃん……」
「大好きだった女の子がこうして今俺の腕の中に戻って来てくれて………」


ゆっくりと体を離し、二人で見つめ合う。


「ユウお兄ちゃん……、来年も、これからずっとずっと、一緒にいようね」


少し驚いたような顔で私を見つめる。
そして少し泣きそうな顔で、
でも嬉しそうに微笑んでくれて。


「一緒だよ……。今まで離れていた分、いやそれ以上に幸せになろう……。一緒に」
「……うん!」


いつの間にか溜まった私の目尻の涙を指で拭い、そしてユウお兄ちゃんの柔らかな唇が降りてきた。




――大好きだよ。ずっとずっと。




20121230
illust by ねこぴん様