butler | ナノ
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「これは…?」
ルイスさんが紅茶の用意を持って部屋を訪ねてくれ、ふとルイスさんが目に止めたのは、私がテーブルの上に勉強道具とともにバッグから出してきた赤い箱で有名なお菓子。
「今日のティータイムには豊富な種類のマカロンを用意しておりますが……もしよろしければ今からお持ちしましょうか?」
「あ!いえっ、お腹がすいてたのではなくて……これはね、」
今日は11月11日。
近頃では1の並びから「ポッキーの日」というのだという。
「なるほど……そうだったのですね。で、今日はそのポッキーを食べるという…」
「あ、あの……っ、ただ食べるだけじゃなくって……」
「なくって?」
「その……、恋人同士の食べ方っていうのがあって……」
「え?」
「せっかくだから………ルイスさん、ちょっと試してみませんか…?」
「あ、……はい。いいですよ。では紅茶を用意いたしましょう」
何か勘違いをしているというか、私がこれから何をしようとしているのかきっとさっぱり分かっていないルイスさんが紅茶を用意するためにティーワゴンへ戻る。
その間に意を決して赤いその箱に手を伸ばす。
そして――
「……ルイス…さん、」
「はい、……えっ…?」
振り向いたルイスさんの目がみるみる見開かれ明らかに戸惑っている。
「あ、……あの……それは一体……」
「その……これが恋人同士の食べ方……、って……えっと、あの…聞いて………っ」
超恥ずかしい。
そう、私は恥ずかしさをなんとか堪えながらポッキーを咥えその先をルイスさんに向けたのだ。
「つまり………両側から、……食べる、と」
「……そ、……です」
察しのいいルイスさんはどうやら気付いたよう。
そしてルイスさんの顔がみるみる真っ赤になっていくのが分かる。
(どうしよう、はしたないとか呆れられちゃったかな……)
そう思ったその時、
ぐい、と両方の肩を掴まれ、ルイスさんの顔が一気に間近に迫る。
ルイスさんの顔は真っ赤なままだったけど。
「!!」
ぱくり、と。
ルイスさんが咥え、パキンとちょうど真ん中で折られてしまった。
「こ……いう事でしょうか………」
「は、………はい……」
「それから………」
離れた唇が再び間近に迫り、
残りのポッキーをあっという間にとられ、
「っ!」
ちゅっ、と。
「………こういう、事…?」
両頬を掌に包まれ、くい、と顔を上げさせられると、ほんのり赤いルイスさんと目が合う。
そして返事をする間もなく再びルイスさんの唇が降りてきたのだ。
「ふぁっ……、ルイス…さん……っ」
「ん…」
甘く、ほろ苦いチョコレート味のキス。
悪戯をしかけたのは私なのに、
ルイスさんの熱に、キスの甘さにすっかり蕩けてしまったのは私のほうで。
「やっぱり…貴女の方が甘い……」
執事の職の合間に見せてくれた“恋人”のルイスさんから与えられた甘いヒトトキ。
illust by ねこぴん様
20121112