butler | ナノ
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――なんでこんなに気になるのか。
「リュークさん、窓拭き終わりました」
「ああ、じゃあ次は……」
――なんでいつも気付けば目で追っているのか。
「ったく、お前いつまでかかってるんだよ、次まだ頼みたい仕事あるんだから早く済ませろよ」
「無茶言わないでください!これだけのシーツを干すのにそんなにすぐに終わらせられませんっ」
気が強くて、立場なんて臆することなく人に意見して。
でもそれは全て妥当な主張で、まだここに来て日が浅いのに仲間の使用人たちからの信頼は厚くて。
時々鈍くさいトコロもあるけどいつも一生懸命で。
――なんでこんなに………
その気持ちに気付くきっかけになったのは些細な事―――
「あれ、メイド長……、○○○さんは……」
「ああ、リュークさん。彼女ね、怪我したメイドの代わりにあと1箇所残っている掃除を受け持ってくれて……」
休憩の時間だというのに、休憩室にいるメイドたちの中に○○○の姿が見当たらなかった俺は、メイド長に聞いたその場所へと向かう。
(別に、誰でも良かったんだけど……)
今度のパーティーの段取りでどうしても女性の意見を取り入れたい事があった。
誰かにアドバイスを貰おうと思い、何故か○○○の事がまず頭に浮かんで…。
なんで○○○に、と思ったのか。
休憩室にいなかったなら他のメイドやメイド長に頼む、という選択肢もあった筈なのに、気づけば俺は○○○のいる場所へ足を向けていた。
(まあ……アイツは他のメイドと違って俺に遠慮なく意見するし……その意見もまぁ、的確だし………俺もあれこれ言いやすいっていうのもあるし……)
自分で自分に何か言い訳をするような、それは俺が何かを認めたくないのか。
もやもやしている自分の感情と、○○○がいる場所に近づくにつれて歩みが速くなっている事に気付かないフリをして。
(…って、いねぇし)
メイド長が言っていた中庭へ続くテラスにやって来たものの、○○○の姿はない。
「…ったく、アイツどこいったんだ……」
しばらく待っていても現れる様子もなく、口から出るのは溜息だけ。
ここに来れば○○○がいると思い込んでいただけに一憂する。
(いや、だから何でガッカリしてるんだ俺……)
たった今浮かんだ感情に心の中で自分にツッコミを入れながら、仕方なく来た道を戻って行く。
その時。
――ドンッ!!
「う、わっ!!」
「きゃっ!!」
曲がり角からの不意打ちの衝撃。
自分にぶつかってきたソレを咄嗟に受け止めたが、それによって自分の体まで支えきれずにそのまま転倒。
そしてその直後に
唐突に浴びせられた―――――――――水。
「うわっ!つめてっ!!」
「えっ、……あ!!リュークさんっ!!」
その声にびくんと反応した俺が目の前を見ると。
なぜか、そこに、
○○○の姿が。
そして、回りには散乱したモップと、――――――空のバケツ。
どうやらバケツに入っていただろう水は俺が全部かぶってしまったらしい。
「え……………、お前……なんでここに………、ていうか、な、なんだよコレ!!」
「ごめんなさいごめんなさいっ!!」
咄嗟に支えたのは○○○の身体だったのだ。
それは男の俺とは全く違って華奢で、でも柔らかく、温かくて………
こんな状況の中なのに、その感触がリアルに水とともにシャツを伝って自分の体に染み込んでいく。
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