butler | ナノ




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ジャンさんのエスコートの中、連れて行ってくれた場所はほんとにデートさながらで。
シャルルでも有数の公園を二人で歩いたり、
街中に立ち並ぶお店をぶらぶらと眺めながらお互いに気になったものを手に取り眺め、
それは夢に描いたような好きな人との時間だった。

そして、ジャンさんとの会話は何より楽しくて。
ディナーをとるために入ったレストランはとても立派なお店で、席に座っても緊張している私を解してくれるように、いろんな話題を楽しく聞かせてくれるジャンさん。





「それでは、とっておきの場所に行きましょうか」
「とっておきの場所?」
「はい。ついてからのお楽しみです」


ディナーを終え、車を走らせるジャンさん。
その横顔はなんだか楽しそう。


夜の山道を走り、少し開けたところに車が着いたと同時に。



―ドォン!!


「わあっ……!!」
「ああ、良かった……。ぎりぎりセーフだったか…」


真冬の夜空に鮮やかな大輪の花火が上がったのだ。
赤やピンクが多く花開くのはやっぱりバレンタインだからなのか。


「ルイスさんに、シャルルではバレンタインの日に花火が上がるイベントがあると聞いていたので」
「すごいです…!冬にこんな花火が見られるなんて思ってもいませんでした!」
「喜んで頂けてよかった。ルイスさんにリサーチした甲斐がありましたね」


時折ハート型の花火も上がり、それに見入って外に出るという事も忘れ、そのまま車内で夢中で空を眺めた。

ふと、視線に気付き、ジャンさんの方を見るとジャンさんがこちらを見ている。


「ジャン…さん?」
「あ…いや…。○○○様の顔が、花火の赤色が反射して同じ色をしていたから…」


すっと頬に伸ばされる手のひら。
ドキリと体全体が脈打つような感覚。
ジャンさんの瞳が揺らいで、それでも私を捉えて離さない。

ハッと我に返り、慌てて手を引っ込めるジャンさん。
照れ隠しなのか、そのまま後部座席の方を振り返り、何かを探る。

そして―


「○○○様に、これを」


差し出されたのは、1輪の真っ赤な薔薇とともに、キレイにラッピングされた小箱。


「え……?私に、ですか?」


震える手で受け取る。


「あの…、これは…?」
「私から○○○様へのバレンタインプレゼントです」

「……えっ…、」


思わず顔を上げ、ジャンさんを見上げる。
しっかりとした眼差しで私を見つめるジャンさん。
冗談でもなく、本気なのが伝わるその瞳。



「……あなたが、好きです。○○○様」








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