butler | ナノ




(2/2page)

「アルベルト、久しぶりだな。よく来てくれた」
「お久しぶりですサヴィーノ様」
「おや、そちらの方は……?」


初めてお会いするサヴィーノ様はとても人柄の良さそうな方で、笑顔がとても印象的だった。
にこやかに私たちを出迎えてくれる。


「初めまして、○○○と申します」


緊張しながらもきちんと挨拶をする。
すると、アルベルトさんがスッと私の腰に手を当て、


「彼女は本日私のパートナーとして今夜の席に来てもらいました」
「ほぅ……すると貴女は……そうか…。実はなアルベルト、なかなか身を固めないお前に縁談を、と思っていたんだが……」


(え、縁談…!?)


突然の急な話にざわつく胸。
でも――。


「お心遣い、ありがとうございます。…ですが彼女は私の大切な人です。そのお気遣いは無用でございます」


きっぱりとそう言うアルベルトさん。
まっすぐな彼の言葉に瞬時にまたカアッと赤くなりだす私の顔。
そしてドキドキと煩く脈打つ心臓。
腰に回されたアルベルトさんの手のひらに少しだけ力が込められた。


「……そうか。……アルベルト、漸くお前もいい人を見つけたんだな」
「恐れ入ります……。今後もご指導賜りますようお願いいたします」
「ははは、相変わらず固いなお前は。ロベルト様ほどとは言わないが、もう少し力を抜かないとお嬢さんに逃げられてしまうぞ?」


そう言って冗談を入り交えながらにこやかに笑った。
曖昧な笑みを浮かべるアルベルトさんが可愛くて、そしてさっきの言葉がすごく嬉しくて、私も自然と笑みが零れるのだった。






ひととおりの挨拶を済ませ、用意された豪華な食事とお酒を楽しんだ後、火照った体を少し冷まそうと2人でバルコニーへと出た。
雲の少ない今夜は星と月の光が沢山降り注ぎ、まぶしく私たちを照らす。
会話はぽつりぽつりと他愛もない事を話しているだけなのに、アルベルトさんが傍にいるだけでとても落ち着く。

すると。


「迷惑……でしたか?……あのように貴女を紹介した事……」


突然そう言うアルベルトさんの方を見上げると、私を伺うような表情。
私はブンブンと首を振り、


「そんな迷惑だなんて……っ、それよりも嬉しかったです……すごく……」



“私の大切な人”



――アルベルトさんが言ってくれたその言葉。


迷いのない力強い言葉に胸がとても熱くなり、とても愛おしくて……
思い出しただけでも、じわりと熱いものが込み上げてくる。



「○○○……」


アルベルトさんが私の方へ向き直り、優しく髪の撫で、そのまま頬に手を添える。
大きな掌から伝わるアルベルトさんの体温は少し高く感じられた。



そしてアルベルトさんがポケットから何かを取り出す。
小ぶりなベルベットの箱、その蓋を開ければキラリと輝く上品なリング。


「……誕生日、おめでとう○○○。今日の○○○の特別な日を一緒に祝うことが出来てよかった。……受け取って貰えるだろうか…?」
「素敵……アルベルトさん、ありがとうございます……!嬉しい……」


嬉しい気持ちが昂ぶりすぎてうまく言葉に出来ない私の手のひらをそっと持ち上げ、左手の薬指にそっとはめてくれる。


「いつか……近い将来、この指にきちんとした指輪を贈りたいから……その時まではこれをつけていてくれますか?」
「それ……っ、て」
「その時も、今みたいな良い返事を貰えると嬉しいのですが」
「アルベルトさん……」


彼の言わんとする事が分かり、涙が零れそうになる。
そう遠くない未来、彼が私の傍に居続けてくれる事を彼自身が叶えてくれるかもしれない。


星の光を受けてキラリと輝く指輪にアルベルトさんがそっと口付けを落とす。
とても優しい瞳を向けるアルベルトさん。


「○○○……いつまでも愛しています」


最上級の愛の囁きとともに降りてきたアルベルトさんの柔らかな唇。
私も精いっぱい大好きを伝えたくて、温かい大きなアルベルトさんの背中に手を回し、アルベルトさんのキスを受け止めた。





end.




(明日、ロベルトに指輪の事あれこれ聞かれちゃうかも……)
(むしろしっかりとその指輪を見せつけてやってください)
(えっ……)
(いい加減、あの方にもはっきりとさせておかないといけませんからね)
(アルベルトさん、楽しそう……)




愛海ちゃん、お誕生日おめでとう!!!!


20130119



prev